第三章(1) いざ、パーティ当日
パーティというのに参加すると言ったことを少し後悔するほど、ドレスはキツく締められ、苦しいですし、あの人を見つけるために参加しようと決めたのに、人が多すぎてなかなか見つからなくて、私はパーティが始まる前に疲れてしまいました。自分で参加すると言ってしまったので、今更帰りたいなど言えるはずもなく、我慢することにしました。
「波ちゃん、大丈夫?」
しかし、そんな努力もわかってしまうようで、学さんにそう言われてしまいました。
「申し訳ございません。少し疲れてしまって」
「そっか・・・。とりあえず、安在さんに車を近くにしておいてもらうから、早めに帰ろうか」
「申し訳ございません」
「いいよ。でも、楽しんでから帰ろうね」
学さんの言葉は、私の疲れを少し軽くしてくれました。
学さんのところには沢山の人が挨拶に来ました。皆さま、私を見るなり怖い顔をされますが、学さんとは笑顔でお話されていました。
舞台に素敵なドレスの女の人と湊様がいらっしゃいました。
「皆さま、本日は我が岸家のパーティへお集まり頂きありがとうございます。どうぞお楽しみくださいませ」
女の人がそう言うと、周りの人たちは拍手をしていたので私も拍手をしました。
「さて、パーティの始まりを、皆様のダンスで彩って頂けますかしら?」
その言葉とともに始まった音楽は習っていたものと同じでした。
「波ちゃんは、ダンスを誘ってくる人がいなかったら私と踊ろう。別に誰と踊らないといけないなんて決まりはないし、男女で踊ればいいんだから」
正直、私を誘う人なんていないと思っていたので、そう学さんに言われたとき素直に、よろしくお願いします、と言ったのに。
「波ちゃん!一曲、僕と踊ってくれませんか?」
「え?」
「キャーーーーー」
私のところには湊様がいて、私をダンスに誘っていました。
他の令嬢たちはその光景を見て悲鳴をあげているし、学さんは固まっていた。
「もちろんですわ」
「良かった。こっちで踊ろ!」
湊様に建物の真ん中に連れて行かれ、曲の流れに乗り踊り始めました。
「波ちゃん、すぐ見つけたよ」
ダンスを間違えないように必死だった私は、急に話しかけられて驚きました。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ?」
「申し訳ございません」
「謝らないで。波ちゃん、ダンスとっても上手だから、踊りやすくて助かるし。あとは、僕の為に、笑顔で踊って」
「わかりましたわ」
私には、断ることは許されない。
だから、私は今の私にできる最高の笑顔で湊様の方を向いて言いました。
その後の時間はあっという間でした。いつの間にかダンスが終わっていました。
「とても楽しかったよ!一緒に踊ってくれてありがとう!これからもよろしくね、波ちゃん!」
「はい。何卒宜しくお願い致します」
「またねー」
湊様が私から離れると、すぐに学さんが私のところに来ました。
「ダンスの感想は家に帰ってからにしよう。とりあえず、家に帰ろうか」
「はい」
私は学さんに腕を引かれて会場を後にし、車に乗り込むとすぐに疲れが体を襲ったのでした。




