第二章(9) 私が丁重に断っていたら・・・
龍也様と岸・・・湊様がお帰りになって、ダイニングに集まるように学さんに言われてすぐに全員集まったのにも関わらず、少ししても誰も何も話しませんでした。その空気は私の心を苦しめました。
私のせいでお二人に迷惑をかけてしまったのではないか。私が、友達にと誘われたときに、車がどこか聞かれたときに、丁重にお断りしていればよかったのではないか。
私が、断れば、こんなことにはならなかったのではないか。
「・・・申し訳御座いません」
私のせいとしか、考えられないのです。私はやはりここにいてはいけないのでしょう。早く、早く帰りたい。帰って、罰を受けないと。あの人は、ここには来てくれない。私から帰らないといけない。だから、だから、こんなところで、助けてくれた人を、苦しめていることは、許されない。
「何を謝ってるの?何も謝ることはないわよ?」
「私が、断れなかった、から、」
「あら、私達、あなたに断りなさいなんて、教えてないわよ?」
「ですが、私がお断りしていれば、こんなことには・・・」
「いや、岸様はここにいつかいらっしゃるつもりだったそうだ。それが今日になっただけだよ、波ちゃん」
この人たちは、私のことを怒っているはずです。
なのに、どうして、こう、優しいのでしょうか。
私のせいだと、そう、思っていたのに、それが嘘のように思えてくるのです。
・・・いいえ、私のせい。
「波ちゃん、疲れたでしょ?今日は軽めの夕食にしてもらったから、食べましょう?」
「・・・・・・」
「波ちゃん、疲れてるなら、仮眠をしてもいいよ。僕は仕事場にいるから」
「すみません。仮眠を取ってきます」
「わかった。ゆっくり休んでね」
「はい。すみません」
「「おやすみ、波ちゃん」」
安在さんに着替えさせてもらって、ベットに横になりました。
やはり寝付けなくて、ベットから降りました。
冷たい床は、あの人のことを思い出させます。あの人なら、今日の私に何を言うでしょうか。怒ってくださるでしょうか。これだけ怒られることをしているのに、あの人が穏やかなはずがありません。そう思うと、やはり私はここではなく、あの人のところにいるべきだと思うのです。あの人の怒り、というものが、私以外の人に行かないことを願います。私があそこにいれば、誰も傷つかないのです。




