第二章(8) 湊と僕とアイツ By 龍也
「湊、俺、その話始めて聞いたんだけど?」
まさかのあの女をパーティに誘う発言に引っ掻かかりを覚えた僕は湊に質問した。
「え?言わなかった?」
「聞いてないし、行くなんて言ってない!」
「え〜来てよ!」
僕が行くのも面倒なのに、この女も一緒なんて、マジで勘弁してほしい。
「おじさん、どうしますか?」
僕はおじさんなら断るだろうと話を振ってみた。
「すみません。義娘の出席は話し合ってから決めてもよろしいでしょうか」
おじさんの応えは僕の想定と違った。
「構わないよ!うちに連絡してくれると嬉しい!番号知ってる?」
「恐れながら、存じ上げておりません」
「なら、後で教えてあげるね!」
「よろしくお願いします」
「あ、そうだ。中宮さん、僕のこと湊って呼んで!」
流石にその言葉には誰も驚きを隠せなかった。
「なんでそうなるんだ?」
僕が、ここにいるの誰よりも湊に普通に意見できる僕が聞いた。
「え?だって仲良くなりたいし。僕はなんか、家柄とか関係なく中宮さんと接したいの!それにさ、龍也と仲良しなんだから、僕とも仲良しでいいでしょ?」
「は?僕はコイツと仲良くなんて・・・」
そういったところでおじさんの悲しそうな顔が見えて、これ以上言えなくなった。
「え、そうなの?なら、僕が一番先に中宮さんと仲良くなるねー。よろしくね、中宮さん!」
「よろしくお願い致します、岸様」
「湊」
「・・・湊、様」
「まあ、今日のところは名前で呼んでくれたからいいことにする!いつか絶対様を取ってもらうからね!」
湊の名前をアイツが呼んだとき、なんか今まで感じたことがない何かを感じた。僕はその感覚が気持ち悪くて、アフタヌーンティーのケーキを食べた。甘さが気持ち悪さを消してくれた。
僕たちは少しアフタヌーンティーを頂いた後、家に帰ることにした。
「僕、色々、こんなにおもてなし受けると思って無かった」
電話をして車を待っていると湊がそういった。
「・・・立場ってもんなんだよ。湊、今まで他人の家に行ったことないのか?」
「ないよ、そんなの。だって僕を誘うの女の子だけだもん!それにさ、ここ、龍也の家の系列でしょ?ここまでしなくてもいいじゃん」
「・・・おじさんは、そういう人なんだよ」
そう。いつも、僕がいても仕事の電話が入ったら仕事だし、お客様が来たらお客様だ。いつもお客様が羨ましかった。だけど、今は、普通におじさんと、話したい。今日みたいに『大宮様』なんて呼ばれたくない。
今日の事はとても不快だったけど、湊が普通の女の子と接することができてよかったな、と思った。




