第二章(5) 僕が教えを守れなかった日 By 龍也
教室に戻ってこれた僕たちは、普通に授業を聞いていた。
しかし、どうにも気が散る。
なんで二組にアイツがいるんだ!
確かにここには僕が通っているから通える。
でも、わざわざここじゃなくてもいいだろうに。
そもそも、なんで子会社の子息までここに通う必要があるんだ?本社の跡継ぎだけでもいいはずなのに・・・・
そんなことを考えながら僕はいつもになく内容が頭に入らないまま、授業を終えた。
「龍也!今日さ、暇?」
「・・・なんでだ?」
「一緒に行きたいとこあるんだよね〜」
「わかった」
「やった~!」
湊との交流が各両親に認められてから、学校の中で一緒にいることが当たり前になった。
放課後、いつも家に一人でいると知った湊が、週の半分弱、僕と遊んでくれるようになった。
といっても遊ぶことなんてなくて、宿題を一緒にしたり、お菓子を一緒に食べたりするくらいだったけど、僕にとっては大切な時間だった。
だが、今日は違った。
帰りに僕と湊が来たのは迎えの車が待つところだ。
湊は自分の家の車の運転手に
「あ、今日は遊んでから家に帰るので、帰るときに電話します」
「わかりました。電話を受け取り次第、急ぎ迎えに参ります」
「よろしく〜」
と言っていた。
「湊、今日って家の人に伝えてなかったの?」
いつも湊は計画して動く人間だ。こんなことは無かった。
「うん。今日はさっき思いついたから」
「へー。で、俺も迎えが来てるんだが?」
「あ、そっか。じゃあ、伝えなきゃ」
僕と湊で、僕の家の迎えの人に事情を説明すると何なりと許可が降りた。
「で、どこ行くんだ?」
「ちょっと待ってね・・・・あ、来た!」
待っていた人が来たみたいだった。
「中宮さん〜!!」
「は?」
前を見るとアイツが僕たちの目の前にいた。
「岸様、ごきげんよう」
「中宮さん、一緒に帰ろ!」
「は?お前何言って・・・」
「あの、すみません。今日は迎えが・・・」
「あ、そうなの?」
ああ、良かった。一緒に帰ることにならないで済む・・・
「ねえ、中宮さんの迎えの車、どれ?」
済まなかった。
コイツもおじさんたちからちゃんと教わった知識が身についてるみたいで湊の言う通り自分の迎えの車を案内していた。
僕も湊についていくと、湊は運転手の人に何か話していて、少しして僕に、
「龍也!許可降りたよ!!乗っていいってさ!」
と言ってきた。
「はあ?!」
いつも通りにしなければいけない。何があっても動じずに、自分は大宮家の跡取りだということに責任を持っていなければならない。
そんなことわかっているはずで、小さい時から教わっているはずだった。
だけど、始めて教えを守れなかった。




