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序章
ある土砂降りの大雨の夜。
その都市には大雨勧告と洪水警告が出されていた。
誰も皆、家もしくは避難所に身を寄せ、大雨による被害が大きくならないよう願いながら眠りについた。
雨音が響き渡る住宅街に、一人の少女が歩いていた。
季節は冬だというのに、真夏に着るかのような白くて薄いフリルのワンピースは、雨に濡れ、肌の色がわかるほど透けていた。
その少女は俯きながら歩き、少しして倒れた。
そして夜が明け、昨夜とは違い心地よい春の陽気を感じさせる天気の朝、少女はとある夫婦に助けられた。
この物語は、そんな少女の物語である。