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幕間2


 そもそもの話ではあるが、ネロに対し人間を充てがうというのはアリに対し象を出すようなものだ。

 だからこそネロに出来得る限り力を抑えさせた上でも大きく体を動かせるように配慮し、ヒナキは全力で相手をする必要があった。


 そもそもその少女が本気を出した瞬間にこの付近一帯が更地になってしまう。


「そろそろ仕事だし、汗流してくるわ。ネロはどうする?」


「んー……もう少し体動かしとくぅ」


「そこそこにしとけよ、今日の仕事は根気いるんだからさ」


「今日は哨戒任務だっけぇ?」


「……」


「なぁにぃ?」


 ヒナキのきょとんとした表情に対し、ネロは口をへの字にしてその表情の理由を聞く。


「いや……、まあいつものことなんだけどさ。言い方は悪いけどこんな小さくて地道な任務でよく文句もいわねえなって思って」


「それ、本気で言ってるぅ?」

 

「ああ、まあ……そんだけ力持ってたら、普通もっと高度な任務がいいとかごねるだろ。少なくとも俺の身の回りじゃそうだったぜ」


「前線部隊がほぼ壊滅状態の中ぁ、なんの支援もなしに最前線に放り投げられたりぃ。高ランクのドミネーター数体に包囲されている一線級二脚機甲部隊かばいながら突撃させられたりすることが高度な任務だっていうならぁ」


「あー……そうだな悪い、配慮足りなかったな」


「方舟の最高戦力なんて言われてても都合よく使われてただけなんだからぁ」


 危険に対して事前に警戒できることがどれだけ尊いことか、ネロにとってその任務は相当重要であり手を抜けない任務であることをヒナキは知らないでいた。

 存在自体が規格外である少女はその規格にふさわしい責任を負わされていたのだろう。


「お散歩してるだけでいいなんてさいこぉ」


「いや、ちゃんと危険がないか確認しながらだぞ。レポートも作らないとだしな」


「レポートなんてAIが作るんだからぁ。小型のドミネーターが出てきてもあたしとしどぉならすぐでしょお」


 ヒナキもネロもある程度仕事を重ねてきているため、任務中に小型ドミネーターと遭遇することは少なからずあった。

 だが基本的にネロの爪によりなます切りにされるため、ヒナキがドミネーターに対し何か対処をするということは周囲に人目がない限りほぼないのだ。


「どこまでの奴なら相手にできるんだ?」


「アルファなら一度に5体から8体くらいかしらぁ? とベータだと2体、ガンマ以上はあたしだけじゃ無理ぃ。なんか武器ちょうだい」


「丸腰でそこまで相手できるのはすごいな」


「あたしってぇ基本的に1対多の戦闘向けに調整されてるから潜水艦で会ったやたら強い奴とか相手じゃ分が悪いかもぉ


 いくら強いとはいえ、万能ではないということを伝えたいようだ。

 こと企業連においてステイシスの扱いはかなり雑であったようなのだが、そこに関しては最高戦力管理者である高部総一郎ができる限りコントロールし負担を軽くしていたようだ。


 そんなことを話しながら二人して事務所に入り風呂場の脱衣所へ。

 ヒナキと一緒に入っているにも関わらず、ネロは恥ずかしがる素振りなど一切見せず拘束衣と下着を脱ぎ去った。

 ヒナキはヒナキでネロのその様子に関しては慣れたもの。

 初めの頃は教育上良くないと思い無理矢理にでも別々に入っていたのだが、全く悪びれもせず後から全裸で浴室に入ってくるため半ば諦めていた。


 一緒に浴室に入ってくることに関し許容しているとはいえ、少女の大きな胸とハリのある尻に目をやるのはあまりに気が引けるため半ば目を閉じてはいる。


「しどぉ頭洗ってぇ」


「はいはい、後ろ向いとけよ」


 毎朝ネロの髪を洗ってやるのがほぼ日課となっている。

 彼女の銀灰色の髪は腰あたりまで伸びているため相当手間がかかるのだが、数をこなすうちに慣れてしまった。

 どうもネロは他人どころか生物に触れることができない体質であったため、唯一触れ体温を感じられるヒナキに対してはことあるごとに身体的接触を求めているようだ。


 精神的な安定にもつながるため高部総一郎はそれを推奨しているが、ノアNPC社長であり元ステイシスの副管理者であったアリアは人間らしい羞恥心が育まれないとして反対の姿勢である様だ。

 実際ネロは羞恥心のカケラもなく、ヒナキの前で素っ裸になろうがまったく意に介さない。

 拘束衣という窮屈な物を普段着用しているせいもあるのか、拘束衣を必要としない日常場面では下着のまま過ごしたりしているようだ。 


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