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幕間ー姫様の特訓ー


 ありとあらゆる報道機関が未だにドミネーター襲撃の件を追っている中、襲撃によって方舟都市に残った爪痕は残さず綺麗に修復されていた。

 方舟に住む人々にとってはの日常が万全に戻ってきたわけではなかったが、それでも襲撃に直後の混乱は緩和されてきているようだ。


「しどぉ、もっかぁい」


「もう勘弁してくれぇぇ……」


 午前8時。

 事務所前にある広い庭園にて、拘束衣の袖をぶんぶんと振りながらながら次を催促する方舟都市最強の褐色の美少女。

 それに対しげんなりした表情で芝生に倒れ込む異世界の男、祠堂ヒナキ。


 何をしていたかというと……。


【ネロ、ストレス解消に付き合ってやるよ】


【なぁにぃいきなりぃ。どうやって解消してくれるってのぉ?】


【組手だよ組手。お前の相手なんてできるやついなかったろ? ある程度力抑えてくれりゃあ相手してやるって言ってんだ】


 ネロはニヤぁっとねっとりとした笑みを浮かべ……。


【ふぅぅん、満足させてくれるのぉ?】


【バカお前こっちのセリフだっつうの、期待裏切らんでくれな】


 と、ヒナキは彼なりのプライドを持ってその少女との組手に挑んだ訳だったが……。

 相手に身動きを封じ抑え込めれば勝利という条件の組みては10戦10勝、すべての軍配はヒナキに上がった。

 だが地面にひれ伏しているのはヒナキの方であり、ネロはピンピンしている。


「まだしたりないんだけどぉー」


「おまっ……どんだけ元気なんだよ、朝から! 飯食わせろせめて……、全力で3時間も動かされたらさすがにもう無理だって」


 今まで見たことのないほど機嫌の良さそうなネロの表情を、芝生に頬をこすりつけながらも確認するとまだ付き合ってやりたい気持ちは湧いてくれど体が言うことを聞いてくれなかった。

 そんなヒナキの背中に小さな、しかし張りのあるお尻を乗せて座ったネロは息をつき……。


「でもしどぉすごいわよぉ? こんな抑え込まれたの初めてかもぉ。あたしの攻撃当たらないんだけどぉ、どうやってんのぉ?」


「当たってないんじゃなくて当たらないように流してんだ。一挙一投足全部が力任せすぎんだよ、ネロは。ケツ乗せんな重いから」


「嬉しいくせにぃ」


(こいつ……自分の体つきがある意味での武器になること覚えちまったな……)


 ネロは自分の体つき、主に大きな胸が男に対しての武器になることを任務中などに出会うヒナキ以外の異性の反応で学んでしまった。

 他の傭兵や軍人が大人たちとおなじ任務につく少女が物珍しくひっきりなしに話しかけてくるのだが、その際にフードた厚手のジャケットからあらわになるネロの美貌と豊満な胸に釘付けになり、その度ヒナキがさっさとネロを連れてその場を離脱する……そんな状況が多々発生していたのだ。

 異様にグラマラスな自分の体つきに無頓着だった少女もその体が異性に対してすこぶる受けが良いことに気づき、主にヒナキに対してのみ見せつけて楽しんでいた。


「しどぉにどうやったら勝てるようになるぅ?」


「動きが全部力まかせ過ぎだ。攻めるにしても守るしても馬鹿正直に動くんじゃなくて虚と実を混ぜてだな……」


「難しぃことよくわかんなぁい。わかりやすく説明してぇ。ちゃんと反省するからぁ」


「あー……動きがわかりやすすぎるって言やぁいいか。すげえ極端な話、今から右手で顔面殴りまーすって宣言してから殴りに来てるようなもんだ。右手で顔面殴ることがわかってりゃあ対策が立てやすいだろ?」


「今までそれでも問題なかったんだけどぉ」


「フルパワーだったらな。小手先の技なんてのは圧倒的な力の前じゃどうにもならんし。でも今はある程度力を抑えてるだろ?」



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