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ノアの弱小PMCー異世界から来た軍人と兵器少女、たった2人の防衛戦線ー  作者: 無糖 喫茶
第3章ー兵器の祭典、セントラルストリートパレード開催ー
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第61話ー兵器開発の天才ー


紫煙を(くゆ)らせながら、そのだらしなさそうな女性は言葉を続ける。


「いやぁ、しかし本当に君をこちらに招待できてよかったよ」


「招待したとは?」


「ん? はは、言葉のとおり私が君をこちらに呼び立てたということだよ。君は一度も不思議に思わなかったのかね? void(ヴォイド)に閉じ込められていた自分が突然この世界に繋がったことに」


「……あの時、強烈な次元の歪みを感知して必死に」


「ヴォイドに次元の歪は生じないよ。それはアウトサイドで次元技術の第一人者であった博士の論文ベースの話ではあるがね。

ふふ、本当に偶然……それこそ天文学的な確率をクリアした奇跡とも呼べる事象ではあったが私が繋げたんだよ。こちらの世界に来てからずっと君の行方を追っていてね。

あの子……、ステイシスが放った超重粒子砲を放った際の次元の歪みを利用して無理矢理君のいるヴォイドへ繋げたのさ」


 そのヴォイドという次元の狭間、無の空洞に繋げれさえすればよかったと彼女は言う。

 時間や死の概念すらないその空間には、何かが存在すること自体がイレギュラーである。

 そこにヒナキは二脚機甲兵器と共に閉じ込められていたが、そこに自分のファンが空間の歪みを作り上げた。

 何もかもが無い空間に歪みという”存在”が生まれたことで存在同士が引き合わされたという。


 正直どうにも理解できない事象が起きて自分はあの次元の狭間を脱出できたのだということだけはわかったが……。


「あまりにも無理矢理繋げてしまったからね、もしかしたらこちらの世界に何らかの悪影響が出た可能性がある。この世界に起こり得るイレギュラー事象の監視をずっと続けていて……」


 ここで彼女は大きなあくびをし……。


「しばらくまともに寝れていなくてね。理路整然と話しているつもりだが、分かりづらかったらすまないね」


「理路整然ではあるけど悪い、あんたが俺をこっちに喚んだってことしか理解できてねぇ」


「ふむ、それでいいのだよ。まあそもそも別に私が君を喚んだ喚んでないはどうでも良くてね。とにかく……君は私に恩があるわけだ」


「どうでもよくねぇんじゃん。恩着せようとしてきてるじゃん」


「いやいや、ちょっと私の実験台(モルモット)になって欲しいだけなのだよ」


「ヤベェよ」


 そもそも実験台という言葉自体がまずい。

 確かに自分は普通の人間に比べて随分と丈夫であり、無茶な負荷がかかる二脚機甲兵器……いやそれ以外の平気であっても扱えるし耐えられるだろうが。


「いやぁ、直近で私のモルモットちゃんであった少女が何やら別人に変わってそうでねぇ。なんというか耐久値や性能が変わったというか。とにかく今面倒を見ている特殊二脚機甲の実験負荷を減らさなければならなくなって困っていたのだよ。なんでだろうなぁ、突然その少女……ステイシス君の耐久力が減っちゃったのかなぁ。それともオリジナルよりもスペックの劣る代替品に成り代わっちゃったのかな」


「こいつ……」


 全部知った上で話している。

 白々しい奴だとヒナキは思ったが……。


「安心したまえ、私は高部総一朗に拾ってもらった身だ。君と同じく彼は大株主さ、管轄は違うがね」


「……わかったよ、あんたの言いたいことは。負荷の高い兵器の実験に付き合えってことだろ?」


「まさしく。そしてその先に駆逐すべき奴らがいてね。私が設計開発した牙であの憎たらしい奴らの喉笛を食いちぎって回るのが私の夢なのさ」


 ……。

 別段今までの会話の中で引っかかる部分はなかった。

 しかし、眼の前のこの人物であればそれも可能かと考えた。

 自分と同じ世界から、ドミネーターと呼ばれる怪物と隣合っていたあの世界からきたこの女なら。


「なあ、突拍子もないことを聞いていいか?」


「ふふ、許可しよう。突拍子も無いことを聞く人間の表情ではないがね」


「……ステイシスっていう兵器を設計したのはあんたか?」


 しばらく沈黙。

 そしてその女はニンマリと笑みを浮かべて言う。


「当然だろう。私以外にこの世界であの傑作を設計した者がいるとでも?」



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