第59話ー尋問ー
「あらっ、おチビちゃん。すごく強いじゃないの」
「こいつが弱いだけだけどぉ?」
「ふぁんはほ……!?」
見た目通りの少女とは思えない鮮やかな不意打ちからの装備奪取を目の当たりにし、メイソンは目を丸くしていた。
逆にその少女に無力化されてしまった伊庭は口の中に銃口を突っ込まれたままのため下手に動けずにいるが、少女の言動には腹が立つようで何かを言い返そうとはしていたのだが……。
「ネロ、銃を降ろそう。そもそもこの人たちは敵じゃないだろ」
「そうだけどぉ」
「そうだろ、銃返してやろうぜ」
「はぁい」
そのやり取りを見ていたメイソンは思いの外素直な少女を見ながら、あらお利口と言い。
ネロは伊庭の口から銃口を抜き、放って返した。
「こいつッ……」
「えい」
銃を返された伊庭はそのままネロに食ってかかろうとしたのだが、顎をネロの足のつま先で打ち抜かれ脳震盪を起こし失神。
その場に倒れてしまった。
ヒナキは頭を抱え天井を仰ぎ見てしまう。
「ネロ……」
「だってこいつ嫌味ばっかり言ってきてうっとぉしかったぁ」
「随分元気なお嬢さんねぇ。伊庭ちゃんはこっちで回収するから気にしなくていいわ、たしかに性格に難がある子だから気分悪くさせて申し訳ないとは思っていたから。で、貴方は来てくれる?」
「そんな怖い顔しなくても行きますよ。俺だけで大丈夫ですよね」
「もちろん」
そう言われ、ヒナキはネロに対し大人しくここで待っているように言う。
ネロは不満そうではあったがこくりとうなずくとソファにちょんと座ってしまう。
結果的にヒナキは護送車に乗せられてそのままGNC軍部まで連行されることになった。
特に抵抗もなにもしなかったためか、拘束すらされずに。
……。
黙って連行されていくヒナキの背中を眺めつつ、ネロはこの事務所の周りに潜んでいた気配も共に消えていくのを感じていた。
おそらくヒナキが敵であった場合に備え、急遽集めた兵士を展開させていたのだろうがまあ雑な包囲だった。
現在、この混乱の中練度の高い兵士を集めることが難しかったにしろ、あのメイソン大佐及び伊庭少尉以外は一息でどうにでもできたほどだ。
だがまぁ少女の頭を悩ませているのは力でどうにもできない状況に直面しているということだろう。
今まで兵器として眼の前の敵を殲滅さえしていれば都市の防衛が完了していたわけだが、先程の件は自分がいくら敵とみなし殲滅したところで更に状況が悪くなるようだった。
話をややこしくしないためにヒナキの言うことを聞いて大人しくしたのだが……。
「ん〜……」
気になって落ち着かない。
自分が何が気になっているのかははっきり自覚できていないが、しどぉは多分GNCの軍施設へ連れて行かれているのだろう。
……が、ちゃんと帰ってくるのか。
「行こぉ」
悩むより行動。
ネロは拘束衣をしっかりと着用し、ヒナキの気配を追って事務所を飛び出した。
……。
数十分揺られて到着したのは広大な軍施設だった。
警備のいる門を抜け、空軍基地を抜けた後に大規模な軍施設へ入っていく。
護送車から降り、その軍施設内へ案内されて通されたのは尋問室らしき部屋であった。
メイソン大佐から自分が今どのような状況に置かれているのかの説明を受けた後、尋問官からテロが起こる以前の行動から現在に至るまでの動きを事細かに聞き出された。
ヒナキの行動自体は一貫して方舟都市の防衛、侵入してきたドミネーターに対する戦闘行動を行っており、ドミネーターの侵入幇助を行っていたような証言は皆無であった。
しかし、人型ドミネーターに対する対処方法や人型ドミネーターに対して既知の仲であるような発言などの情報をGNC側が掴んでいるようで、なかなか尋問が終わらなかった。




