第43話ー無数の爆撃ー
本土と方舟を繋ぐ大橋での戦闘。
人型特殊個体クアッドは方舟側へ攻め入ろうとすることもなく、ただ目の前の特殊二脚機甲ブルーグラディウスと戦闘行為を継続していた。
《ターシャ、粒子使用量が反重力炉からの供給量上回り続けてんだけど! このままじゃ……》
「わかってる。でも防ぎ続けないと橋が落とされるわ」
ブルーグラディウスの自律駆動ユニットを使用した絶対防御光壁が展開されつつもその青い障壁が粒子供給量不足により明滅し始めていた。
攻撃に転じようとしても至近距離での爆発で弾かれるため守りに徹しようとすると延々と爆発物をばらまき続けるため厄介この上ない。
「遠距離射撃で削ろうにも損壊箇所の再生が早すぎる上に核に届かないし、接近したらしたで無限に爆発反応装甲起動させてくるしどうしろっての……!」
攻めも引きもしない人型ドミネーター。
海にノア民間軍事会社の二人が落下してからこの時間を稼いでいるかのような挙動へ変わった。
あからさますぎるその戦闘スタイルの変化に対しブルーグラディウスの搭乗者、結月少尉は違和感を覚えている。
この人型ドミネーター……いや、この一連の方舟襲撃の目的そのものがまさか。
(シドウさんを狙ってのこと……だとしたら)
と、結月少尉は考えた。
実際は彼そのものではないのだが、そう仮定し海中に落下し未だ復帰連絡がないということはおそらく。
襲撃前に海上に姿を見せていた潜水艦に鹵獲されたのではという結論に至る。
「八雲、外海に現れていた潜水艦に対する情報は?」
《GNC海中艦隊が捕捉中! あと数分で包囲できるって》
「捕捉位置は?」
《その真下!!》
「真下……!」
所属不明敵性潜水艦の真上に陣取り続ける爆発物を扱う人型ドミネーター。
そしてその敵性潜水艦を補足し包囲しつつあるGNC所属海中潜水艦隊。
この配置は……マズイのでは。
「八雲、その包囲網マズイかもしれない」
《そいつの爆発物、もし海中でも問題なく爆発するなら……》
爆薬が爆発する際の衝撃は空気中よりも水中のほうが効率よく対象に伝わり、同量の爆薬が空気中で爆発した時よりも影響範囲が広く強烈な破壊をもたらすこともある。
『方舟の奴らも集まってきやがったな。さぁそろそろかァ!? 防御は頼むぜ姉御ォ』
クアッドが大量の爆発性物質を周囲に展開。
それを確認した結月少尉はすぐさま橋真下の海へ向かって一直線に飛翔する。
《馬鹿馬鹿馬鹿!! ターシャ!! なにしてんの!!》
「イージスで防護に入るつもり」
《悪いけどその行動は看過できないって……!》
「!?」
HUD上に緊急停止信号を受信したことを知らせる表示がポップアップした。
その次の瞬間、機体が空中で停止し結月からの操作を一切受けつけなくなってしまった。
そうしている間にも大量に展開された爆発を起こすグレアノイド物質が大量に海へ投下されていく。
「八雲……!!」
《意図的にこっちのガス欠を狙われてたのも気づけって!! 今の残存粒子量じゃまともにイージスを展開できないっしょ!》
緊急時におけるオペレーター権限を使用し、遠隔操作にてブルーグラディウスの動きを制御されてしまったのだ。
無数の爆発性グレアノイド物質が海へ落下し沈んでいく。
直後、凄まじい海面から無数の水柱が噴き上がる。
海中には複数の爆炎が見え、その爆炎が爆発物だけのものではないことは否が応でも見て取れた。
……。




