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ノアの弱小PMCー異世界から来た軍人と兵器少女、たった2人の防衛戦線ー  作者: 無糖 喫茶
第3章ー兵器の祭典、セントラルストリートパレード開催ー
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第22話ーパレード警備開始ー


RBと呼ばれている男は立ち上がり、ヒナキの肩に右手を置き……。


「まァなんだ、ウチのが嫌な思いさせて悪ィ」


「ん、あぁ」


「……あんたも大変そうだな。なんかあったら言ってくれ。できることがあったら力になってやるからよ」


 ちらりと視線を少女に移してから、しみじみとそう言うRBに対しヒナキはなにか親近感めいたものを感じ取っていた。


「オラ行くぞカス。あんま他所様に変な絡み方すんじゃねェよ」


「あ? お前上官に対してなんだよその……痛ぇ! 髪掴むなよ!」


 伊庭と呼ばれていた特殊二脚機甲のパイロットはRBに髪を引っ掴まれ引きずられるように連れて行かれてしまった。

 

「ターシャー! あにしてんの、もう行かないとじゃん!」


「わかってる。シドウさん、また時間を改めて挨拶に伺わせてもらうね」


 後ろで手を振っているパートナーに呼ばれ、結月少尉も取って付けたような会釈をして慌ただしく去っていってしまった。

 見た目がどうとか言うより、恐らく自分自身……及びネロのことについてなにか聞きたいことがあったのだろうと気づいてはいた。


 自分がこちらの世界に来た時、あの戦場にステイシスが乗る白い機体の後方に見えた青い機体。

 恐らくだがその青い機体の搭乗者があの結月少尉なのだろう。

 アリアに聞いた話だが、あの時あの青い機体に救援要請をかけたのは白い仮面の男だというではないか。


 ようやく身の回りが静かになったところで、ネロを連れて警備配置につくため歩き出す。

 

「よく大人しくしてくれてたな、ネロ」


「何があっても大人しくしとけって言ったのしどぉ」


「いやそれでも偉いよ」


 ヒナキは言いつけを守れたネロの頭をフードの上から優しく撫でてやった。


「……んぅ」


 いつもどおりすぐ手を払われるかと思ったが、手はピクリと動いたもののヒナキの手を払うことはなかった。

 フードの上からだからなのか頭だからなのかはわからないが、それでもまあ多少なりとも慣れてきているような様子は見せてくれているようだ。


……。


 警備配置についたのはそれから丁度40分後。

 午前10時頃にもなると相当な人で中央大通りは賑わい始めていた。

 普段は軍事車両や一般車両などが行き交う5車線5車線、計10車線の幅のある道路が歩行者のみの使用に限定されている。


 道路脇には各企業の最新商品展示ブースが軒を連ねており、中には飲食物を取り扱うような出店も存在し、それぞれに客足が絶えず賑わっているようだ。


 そこもかしこも兵器などを取り扱っているのだが、防衛に使用するようなものを取り扱っており自衛を目的とした客も確認できる。

 それにただ展示しているだけではなく、エンターテイメント性に富んだ紹介やアクティビティを開催しているような会社もあり、法人一般人老若男女全ての来場者が楽しめるような立て付けになっているようだ。


 その中でも目立っていたのはセントラルストリート上空に投影されている広告モニター。

 企業連合はGNCの特殊二脚機甲部隊、そしてステイシスが搭乗する純白の機体を前面に押し出したブランドイメージの投影などを行っていた。


 企業連合傘下ではないセンチュリオンテクノロジーは高層ビルの壁面などに宣伝目的の映像を映し出していたが、そこに大々的に映し出されているのはモデル撮影された結月少尉の姿だった。

 あの容姿から、やはり相当等な人気があるらしくそもそも兵器の紹介ではないようなファッション雑誌の広告にすら見かけられる。


「有名人なんだなあの結月って人……」


「うわー!! あのひと銃持ってる!! すごー! 怖いー!」

「こら、お仕事中なんだから声かけちゃ駄目よ」


 セントラルストリートの端っぱ、支給されたアサルトライフルを肩から下げた黒仮面の男に家族連れの小さな男の子が指を指しながら大きな声を出していた。

 母親と見られる女性が慌てて諌めていたがヒナキは手を振ってやり、男の子も同じく手を振り返してくれていた。


「お仕事がんばってねー!!」

「すっすいません……」


 母親は恥ずかしそうにしていたが、ヒナキは会釈をして彼らが通り過ぎるのをほほえましい気持ちで眺めていた。


《しどぉ、暇ぁ》


「と、言われてもな。警備ってそんなもんだぜ。暇ってこたぁ良いことなんだから」


 右耳に装着しているインカムにネロから通信が入った。

 インカムでやり取りしているということは、現在ネロはここにはいない。

 人の多いセントラルストリートでは目立つ、かつ接触の可能性もあるためネロは別の場所で不穏な動きがないか各所を見張っていた。


 インカムを通して風の音が強く聞こえるそこは……。


「随分風が強そうだな。寒くないか?」


《へいきぃ》


 セントラルストリートに沿って立ち並ぶ高層オフィスビル、その屋上であった。

 なにもビル内のエレベーターを使って登ったわけではない。

 ビルの壁を蹴って三角飛びの要領でポンポン上に駆け上がっていったのだ。

 規格外に身軽な少女の身体能力を目の当たりにしてはいたが、まあネロであれば普通だろうと認識していた。


「変わったことあったか?」


《しどぉから北に300メートルくらいのとこで喧嘩があったくらいよぉ。今は他の人が対応してるぅ》


「喧嘩か。こんな華やかな場所に来てまで何やってんだか……。結構離れてるが体調は大丈夫か?」


《大丈夫ぅ》


 ネロがビルの上にいることで、地上の自分とは距離が離れてしまっているためゲートキーの稼働状況が気になってはいたが今の所ネロへの影響は小さいようだ。


 願わくばこのまま自分の周りで厄介な事が起きないででほしいものだが……。

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