表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

勇者、初恋相手なので魔王を殺せない2

本日は2話投稿しております。

まだ読まれていない方は一つ前のお話からお読みください。

王様の部屋の扉を開き中へ入る。


「ああ、君か。そろそろ室内へ入るときの礼儀作法を覚えたほうがいいのではないか?」


優しいのにどこかトゲのある声を発する王様。

その横にはいつか見た初恋の相手が座っていた。

今でも美しい髪と美貌は変わらず綺麗だが成長したことにより女性らしさが増している。

以前出会った時はまだ幼さがあり美少女という感じだったが今では、美女という方が似合う。


「こんにちは、美しいお嬢さん。」


先ほど令嬢たちと話した時と同じように喋ったがなんだか少し違う気がする。

彼女の前に立つと緊張してドキドキする。


「あら、その声あの時廊下で助けてくれた優しい人?」


覚えてくれていたのか!

すごく嬉しくなった。

やはり僕は彼女のことが好きだ。


「そうですね。覚えていてくださり誠にありがとうございます。」


「それに敬語もこんなに上手に使えるようになったのね。」


「あはは、あの頃の自分は少し恥ずかしいので忘れてください。」


「今も、タメ口で喋ってくれていいのよ?」


「その事は本当に忘れてください!」


王様を無視して2人で会話に花を咲かせていると「ウオッホン、」という咳払いが1つ入りそこでは会話は止まる。


「で、君は何をしに来た?」


「ああ、挨拶回りをしようって言われて、仕方なく。皆んな挨拶する相手がいるけど俺にはいないからね。王様に会いに来た!」


「わしはこう見えて暇人ではないのだぞ、ああ忙しい忙しい。暇ならここでない何処かで昼寝でもしておれ。」


俺はブーっと頰を膨らまし部屋を出る。


「あ!王様!俺多分どっかの木の上で寝てるから探す時はそこね。」


もう一度部屋の中に入り、そう宣言してから昼寝を始める。

グースカ寝てたらいつの間にか朝になっていた。

誰か1人でも夜になる前に起こしにきてくれてもいいんだけどなぁ。


「イテッ、アイタタタ。」


どさっと言う誰かがこけた音がするのであくびをしながらそちらを見る、と茶色のフワフワとした髪の毛の女性だった。


「大丈夫か?」


木の上から降り彼女に手を差し伸べる。

すると彼女はありがとう。と言い俺の手を握り立ち上がった。

なぜ走っていたのか聞くと舞踏会があるのでドレスを着せて貰っていると時間がなくなり急いで向かっているのだ。とか。


しゃーないか、


「ちょっと目瞑れ、」


何で?というような顔をした後彼女は俺の言う事を聞き、恐る恐る目を瞑る。

魔法を使い土で汚れたドレスを綺麗にし、瞬間移動で舞踏場へ連れて行く。


「お嬢さん、着きましたよ。目を開けて下さい。」


俺がそう言うと彼女は目をパチパチと瞬きして驚いている。


「あ、あの!ありがとうございます。」


少し頰を紅潮させながら彼女はパタパタと舞踏場へ入っていった。

作法がなっていないことから彼女がこの王城にいると言う平民の少女だろう。

ま、俺には関係ないけど!


自分に用意されている部屋へ向かいベッドに横になる。

外には雪が降っていたどうりで寒いはずだ。

ズズッと鼻をすすり体をさする。


「ヘップし、うーっ寒い!」


夜もきっと冷えたんだろうけど何で外ぐっすり熟睡してんだ俺!?

風邪ひいたかもしれねえ。

くしゃみ出たし、


風邪だったのかやっぱり寝込んだ。

勇者でも風邪引くだなー。

とか思いながら俺は布団の中で安静にしている、はずがなかった。


だってだって!暇なんだよ!

王城の廊下を歩いて出会った人に話しかける。


「お嬢さん、そんなに慌てた様子で如何なさいましたか?」


最初に会ったのは慌てた様子で王城を駆ける侍女、しかし無視された。


「息を切らして如何したんだい、まるで化け物に追われているみたいだよ?」


次に出会ったのはガタイの良い騎士だった。

こちらも無視され俺はテンションが下がる。


「ちぇっ、つまんね。」


俺はそこで踵を返し自分の部屋へ戻る。

この先で起きている事、そこへ駆けつけられなかったことが俺の一生の後悔だ。


それから4日経った。

風邪は余裕で治ってるけど王城つまんねー。

と、この間、平民の噂話をしていたご令嬢方を見つける。


「ねえ、聞いた?」


「ええ、聞いたわよ。」


「ついにあの悪女と婚約破棄なされたのでしょう?」


「それにそれに!殿下が平民の子と婚約なされたそうよ!」


「きゃーっ、平民と王族の身分差恋愛、最高ね。」


「最高でしょう?」


話の中身を要約すると、平民の子が殿下と婚約し、殿下の婚約者だった悪女との婚約を殿下が破棄した。

俺の中に大量の疑問符が浮かぶ。


その疑問をぶつけるように王様の部屋の扉を開いた。


「王様〜!ちょっと聞きたい事があるんだけどさ。」


「む?君もあの話を聞いたのか?」


「聞いた。婚約破棄について、あれってこないだここで王様と話してた子の事だよね?」


「そうだが?君には関係ないだろうに。」


王様は呆れたようにため息を口にする。


「いいや、ある、ありまくる。あの子は婚約破棄されたんだろう?なあ、王様?」


「そうだが……、何だ、その顔は、」


ニヤニヤを抑えられない。


「やった〜!俺の!じゃあ!彼女を俺の物にしてもいいんだよね!?ね!」


俺の言葉に王様は固まる。


「君はそんなそぶりを一切見せてこなかった。この国の人間と結婚して貰うべく美女や権力者、様々なハニートラップ用意してきた。一切引っかからないことから男も用意したのに意味がなかった。そんな君は、婚約破棄をされた傷物の令嬢を?なぜ、」


「なぜ?何故ってそりゃあ!一目惚れ!この王城に来たばかりの頃、不安だった俺よりも不安そうな顔をする彼女を助けた事で俺は吹っ切れたんだ。今勇者をやっているのも、挫けずに頑張れたのも、運命感じた相手、彼女を遠くからでも守りたかったから……。」


俺の言葉を聞いて王様はどこか苦しそうな悲しい顔をする。


「君には聞かせてもいいと思うから伝えておこう。彼女は、婚約破棄後、実の兄が騙されたことにより行方不明になっている。彼女の兄には何かしらの術がかけられていた。術が解けた後、自分のしたことに気付いたのだろう。今は自宅で謹慎しているよ。」


先ほどまでのウキウキとした感情は一気に消し飛び今度は真っ白になる。


「行方不明?」


俺の本当に出ているのかも如何かもわからないような小さな声に王様は頷く。

彼女が?何で?

何かが無くなりぽっかりと穴が空いた気分だった。

俺は?彼女のために頑張ってこれた俺は?喋ったのも会ったのも少ない回数だけだった。

けど俺の大事な部分は全て彼女でできていた。


頭を掻き毟り体を丸く縮こませる。

ああ、何で何で何で何で!想い人1人守れない奴が何で勇者を語ってんだ!

俺の勇者像は彼女のために創り出したもの!彼女が見て聞いて!笑って!

例えそれが俺にとっての不正解でも!彼女が笑えばそれで良かった!

……、

そういえば俺は彼女の名前も知らない。

少ししか会っていないから仕方ない?仕方なくないだろうが!

これじゃあ友人どころかただの他人だよ。


他人の俺が出しゃばって何してんだ?


おれのこのつくったゆうしゃも、いみがない。

いみなんてなかった。


ふらふらとした足取りで俺は王様の部屋を出た。

どこへともなく歩き出す。

明日には、皆を迎えに行ってついに魔王城攻略だ!


なんて意気込んでいた俺はもういない。

部屋へ戻り便箋に手紙を書く。


『勇者としての役目は果たせません。戦う理由のない俺は、只の役立たずです。新しい勇者を探して頑張って下さい。俺のことは探さないでください。』


生きる気にも死ぬ気にもなれなくなった俺は瞬間移動を使い適当な所へ移動する。

そこは森の中だった。

俺は木の穴を見つけたのでそこへ腰を下ろす。

瞼を閉じ深い深い、眠りについた。


全てを忘れるために……。

少年編はもう少し続きます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ