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3-1 魔王と聖女

この第3章で完結となります。

一気に投稿するので順番にご注意ください。

ここは善人が多い比較的平和な世界じゃなかったのか。


そんな想いで目の前の男と対峙した。


「さぁ、次はお前か?精々短い時間しか持たぬだろうが、少しは我を楽しませてもらおうか。」


コイツは魔王。マユタが協力して倒したはずの。そんな恐怖の存在に何故相対する事となったのか、話は少し前に戻る。



ーーーーーーーー


「こんにちは〜、勇者サンドはまだありますかー?」


「おう、らっしゃい。残念、さっき丁度売り切れたとこ。」


「えー午前中だったらあると思ったのにぃ」


「材料があれば作れないこともないけど、ズズちゃんが店番してるなら買い足しに行ってくるけど?」


「!するする!流石勇者!」


ここは城下のパン屋『Youーshaブレッド』

もちろん店主は勇者フレッドさん

ブレッドとフレッドを引っ掛けてるそうだ。


何故勇者がパン屋を?と思うだろうがフレッドさんはもともとパン屋さんなのだ。


勇者になって魔王を討伐した後も慎ましくパン屋に戻ったというフレッドさんを私は尊敬する。


「あ 来週のミトさんとのデートはメロン勇者パンをおやつに買っていこうかなー」


**回想**


「おいズズ。来週の木の日に隣町で祭があるのを知ってるか?」


「異世界転生初年度に私がそんな情報持ってると思うほど頭がおめでたいのですか。さすが嫌味の中の嫌味王なミトさんです。」


「言うほど嫌味じゃないだろっ。だから、その、その日はお前の予定はどうなのかと思って」


「そうですね、お祭りといういい情報をいただいたのでマユタでも誘って行こうかしら。」


「・・・!王子妃がそんな急な予定に合わせられるわけないだろう」


「そうですね。じゃあ侍女のエリーさんなら空いてるでしょうか。」


「・・・・ズズ、お前分かってて言ってるだろう。」


「エリーさんが兵士のグスタフさんとお付き合いしてる事ですか?」


「グスタフもその日は休みの申請をしてきたぞ。じゃなくてな、」


「なるほど。ではエリーさんも望み薄し、という事ですね。ではエリーさんの弟のレナン君を連れ出しましょう、体の弱い子なのできっと喜びます。」


「ぐぬっ、そ、そうなのか・・・。」


ミトさん しゅんとする。


「冗談ですよ(笑)。ミトさんが連れてってくれるんでしょう?」


ミトさんは複雑なお顔で

「大丈夫なのか?」


ああミトさんは会ったこともないレナン君の事を考えてくれてるんですね。こんな所で優しさを発見とは。


「レナン君にはお祭りのお土産を買って行くことにしますよ。エロい牧羊犬が羊に蹴られて落ち込んでたから祭りにはそいつを連れていったと言っておけば納得するでしょう。」


「俺は犬か!!」


「そんな怒っている様で 気が引けたような 嬉しそうな 期待もあるような んでもって下心も付随してそうな複雑なお顔が出来るとは器用な人ですね。


軍人さんは表情筋まで訓練で鍛えるとは 筋肉の死角無しですね!」


「!下心って、お前、言い方があるだろ」


「えーないの?」


「・・・・ある。」


「ふふっ。待ち合わせはどうしますか?」


「祭は一日中だから午後からにしよう。夜の部は小さな山車が練り歩くらしいぞ。」


「わぁ楽しみです。山車は希望すれば参加で引けるらしいから一緒にやりましょう。」


「おまえ、知ってんじゃねえか!!」


「山車が通る道順までバッチリです!」




****



いま思い出しても愉快だ。娯楽が以前より少ない世界だからかひとつひとつの出来事が愛おしい。


最早ミトさんをおちょくる事が私の娯楽のひとつになっていて、隙あればイチャイチャしたいミトさんの引力を利用して異世界を楽しんでいる。


引力を利用する為に最後までのイチャイチャはしてない。

そのためマユタはじめ王宮勤めの方々には「極悪非道な聖女」と言われる。なぜだ、不本意だ。


カランカラン♪フレッドさんが戻ってきた。

「ズズちゃん、待たせ


その瞬間

グルングルンと景色が変わった。



****


「おまえが新しい聖女か。面白い異世界人らしいな。」


「魔王か!!何故生きている!!??」

フレッドさんが私を庇うように魔王との間に立つ。


「所謂復活という事だな。力の調整が効かずに勇者の店まで転移させてしまったか。」

魔王は綺麗なお顔で美しく微笑む。アルヴィン王子殿下とは違うが麗しい金髪を靡かせてこちらを見た。


「聖剣を持たぬ勇者など 今の我でも雑作ないな」

魔王は一撃でフレッドさんに魔法を喰らわせた。


「うああぁあ!し、痺れる!身体が、う、動かねぇ。」


「その苦痛の顔でしばらく我を楽しませよ。従って殺さぬ。愉快だのう、勇者よ。」


「うううッ」


****


そして冒頭の状態になった。



チラリと魔王がこちらを見遣る。


「ええと、私は何で呼ばれたんでしょう?」


「我を楽しませるため、と言うた。頭の悪い女だな。」


「数多く居る人から何でピンポイントで私なんですかね?テキトーに呼んだら当たったみたいな、ですか?」


「・・・極悪非道の悪女で聖女だと呼ばれる異世界人がどういうものかと興味はあったか。」


「その呼び名に激しく不本意ですが、そうですか。ちなみに魔王さんは何が楽しいと思うのですかね?」


「ズズちゃん…!そ、そんなの、聞い、て、どうす、、うあああ!!」


「五月蝿い勇者だ」

魔王は更に魔法を放つ。


「ニーズに対して聞き取りを行うのは必要かなと。私はこの人の情報を全然知らないので対応ができないですから。」


「ほう 我を知ろうとするか。」


「まあ、とりあえずは教えてください。

魔王さんは退屈なんですよね?」


「そうだな。力だけはあるが城も荒れたままで此処では何も無くつまらぬ。」


「具体的にはどんな事したいんですか?」


「ふむ…まあ復活前は

我を崇め奉る声に囲まれ

美女どもの嬌態を眺め

血肉を思う存分喰らい

人間の争いを起こし

戦いの阿鼻叫喚を楽しむ


まずはそんなところか。」


「そうですかー、じゃあ私がご案内しますんで一緒にどうですか?」


「ズ、ズズちゃん!!!!?」


「まずは魔王さん、フレッドさんにかけてるこの痺れの魔法は止めましょうか。


んで、フレッドさんの奥底にある要望を満たした夢を見させてしまいましょう。」


「何でだ?それの何が楽しい?」


「魔王なのにわかってませんねぇ。

思う存分幸せに浸った だらしない顔を見られた後の恥ずかしさったら死にたくなるほどなんですよ。」


「なるほど。中々に非道だの。」


魔王さんはピピっと手を振る。


「あああ!!」フレッドさんは気を失って崩れた。


「ふふ…ミーコちゃん…可愛いでちゅねー…」


「・・・ちょっと語尾がキモいですね。ミーコって確か近所の猫だったか。」


「此奴は五月蝿い故 しばらく放置しておくか。後で再生出来るようにしておく。」


「さすが魔王…!」



「では見せてもらおうか、お前の案内とやらを。」

勇者メロンパンにはずんだ餡が入ってます。

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