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なろうラジオ大賞2 • 3 • 4 • 5 • 6参加作品

山の頂きに座るサーファー


俺は雪が舞う山の頂きで、愛用のサーフボードを抱え寒さに震えていた。


このまま凍死する事になるだろうけど、昨晩の事を思い出すと笑が零れる。


数年前、あるアマチュアの天体観測者が巨大な隕石を発見した。


NASAなど世界中の宇宙観測所が調べた結果、98%以上の確率でその隕石が地球に衝突する事が分かる。


落下地点は太平洋のど真ん中。


隕石の激突で巨大な津波が発生し、太平洋に面した国々の沿岸に押し寄せて来るとの観測結果も公表された。


国々は内陸部に疎開するなど、隕石激突後の世界を見据えた計画を立てる。


でもサーファーは違った。


誰も経験した事が無い巨大な波が発生するなら、その波に乗りたいって思いに囚われる。


だから俺達サーファーは、隕石が激突する数時間前から太平洋に面した海岸に集結し冬の海に入った。


ボードに腹這いになって遥か沖を目指して泳ぐ。


沢山のサーファーが沖を目指して泳いでいた。


俺のように一人で泳ぐ者、家族や仲間達と声を掛け合いながら泳ぐ者達。


冬用のウエットスーツを身に着けているとはいえ、冬の海は冷たく身体が強張り脱落する者も多数いる。


突然真っ暗だった夜空が明るくなった。


明るくなった方を見上げると、夜空を切り裂くようにして燃え上がる巨大な隕石が落ちて行くのが見える。


隕石は水平線の先に消え十数秒後、遥か彼方に目が眩む閃光が走りその数分後、凄まじい衝撃波が俺達を襲う。


衝撃波でまた多数の脱落者が出た。


泳ぎ続ける俺の身体が前方に引っ張られると感じた時、俺の目に巨大な波が押し寄せて来るのが写る。


俺は巨大な波に乗る事が出来た、が、大部分の者は乗り損ね波間に消えた。


俺が乗りこなしている高さ数百メートルの巨大な波は、海岸を超え街や田んぼなどを飲み込み山の斜面を駆け上がる。


巨大な波はいくつかの山を乗り越えた所で勢いが無くなり、俺を山の頂きに放り出すと引いて行った。


俺のように山の頂きや中腹に軟着陸出来た者もいるが、山と山の間の谷に落下したり切り立った崖に叩きつけられたりしている者達もいる。


山の頂きの岩に腰掛けた俺の身体は震えていた、寒さで震えているのでは無く、巨大な波に乗れた事に対する歓喜での震えだった。


明るくなると眼下に見えるのは、巨大な津波に襲われめちゃくちゃになった大地。


俺の身体も歓喜の震えから寒さによる震えに代わっている。


抱えている愛用のサーフボードをもう一度強く抱きしめた所で、俺の意識は無くなった。
















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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは。 嫌いじゃありません、こういう人たち(ニヤリ)。 狂い、というのは自分の全て、ときに命までもかけてしまってそれでも満足なんですよねえ。 なんてはた迷惑な(笑)。 読ませ…
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