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魔王は時間に反逆しました  作者: 姫草真翔
第1章
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魔王は悪夢に反逆しました


「魔族が暴れ回って、人を攫い、人を喰らう……?」


「真実よ……私の妹も……」













静かな夜の森には趣がある。


覆い被さる様な木々に、夜光虫の灯火に、夜鳥の奏でる戦慄(メロディ)

黄昏れるのに、森は場所も時間も選ばず絶好的と言えるだろう。


そういうば、人類との争いが激化し、外に赴く事は無くなっていたが、我が幼く平和であった頃は、家臣の目を掻い潜ってよく脱走したものだ。



「……最終的には見つかって、異様に説教されたものよ」



背後から焼け焦げたような香りが鼻腔をくすぐる。



「今、思えど、説教で1日が終わるとは……些か過保護が過ぎると、貴様も思わぬか? 」



振り返ると、自身を呑み込むほどの大きな闇がそびえている。

人間の子供の姿になって唯一理解したことがあるとすれば、何もかもが大きく見えるということだ。



「さて、貴様が人攫いの犯人であるか?」



闇に問い掛けると、闇はククク……と声を上げながら、その姿を月明かりの元に晒した。



「ザンネンだけど、私は"ボク"が言ってる人攫いじゃないと思うよ? まぁ、攫っちゃうんだけどね」


奇妙な笑みを浮かべる、その何かに月明かりが反射し我の身体は固まっていた。


決して石化魔法や薬物を投与された訳では無い。

目の前の光景に驚きを隠せなかったのだ。




「貴様は……アウレリウス……? 」



見間違えようがない。


姿こそ大きく見えるが、目の下のクマにボサボサのくせっ毛。そして、薬品が焼け焦げたこの匂い。幼き頃より目に着けてきたのだから、間違える訳がない。



しかし、強烈な違和感を感じる。

声や見た目に、何ら違いはないのだが、何かがおかしい。



「……あれれ? お兄ちゃんの事を知ってるのかな? けど、お姉さんはアウレリウスじゃなくて、ア、リ、スって言うのよ」




そう言うと、化け物は着ていた白衣を少しはだけさせ、胸を強調させるようなポージングをとって見せると、我の目の前は真っ黒に染め上げられた。




ーーーー



幼き頃に1度、研究用の冷凍庫に閉じ込められたことがある。

寒く孤独で、とてもとても悲痛な時であった。


もう無理なのかと諦めていた時、我を見つけ出してくれたのは、慌てふためいた様子のアウレリウスだった。


その後は我は疲労の余りに意識を失ってしまったが、あの刹那に見たアウレリウスは、情けなくもあったが我の英雄にも思えた。


幼い我を、1人前の魔王に教育したのも奴だ。


紛れもなく、奴は我の英雄だった。



ーーーー





「私の魅力にやられちゃったのかな?」



凍りつき動けないでいる我を見て、ため息を着くと野太い声の化け物は、目に虫が入ったかのように、片目をパチパチパチさせて近付いてくる。



……どう考えても奴はアウレリウス……



「ねぇ無視しないで? お姉さんに攫われちゃうわよ? 」



……それとも悪夢を見ているのか……



「いつまで黙ってるつもりかしら? ホントに魅了されちゃったの?」



……霊が夢枕にたったか……



「もういいわ……さっさと攫ってーー」



……ちがう……



「アウレリウスは死んだ!それは現実だ!

しかし、我がどれほど落ちぶれ、悪夢に(うな)されようと

も、貴様 がアウレリウスである事くらいわかる!」


歯を強く噛み締め、我は叫んでいた。



「ーー!」



「何故、偽る! アウレリウスに兄妹など存在もせぬし、我の英雄に、女装癖などあってたまるものか!」


「貴様こそが、天才科学者アウレリウスであろう!」



何時間にも感じる沈黙の末、化け物は我を見つめ呟いた。



「ーー魔王様……なのですね」



我の目の前には、あの英雄が立っていた。

次回の更新は17日の0時前後を予定しています。

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