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魔王は時間に反逆しました  作者: 姫草真翔
第1章
2/4

01.小娘は魔王に反逆しました

鳥のさえずりで目を覚ました。

辺りは木々が生い茂っていて、眩しいばかりの太陽が優しい温かさで我を包んでくれる。


「ここは……」


考えと裏腹に、動かない頭を働かせる。

ここがどこなのか。何が起こったのか。何が起こっていたのか。


我は人間共に追われ研究室で……


「アウレリウス……!」


全て思い出すと我の体は完全に覚醒した。

我は眠らされたのだ。そしてアウレリウスは人間共に殺された。

力さえあれば、あの様な事にはならなかっただろう。


悔しさと後悔が胸を強く握りしめ、吐き気を催す光景が脳裏を過ぎった。


「あなただあれ」

「ーー」


唐突に声をかけられ、驚きのあまり産まれたてのドラゴンの様な声を上げていた。


「あなた、どこのこ?」


見た所人間である。

憎き憎き憎き人間である。


「……貴様、人間であろう。我は子供であろうと、最早人間には容赦せぬぞ」


「キャハハ! おもしろいねキミ!」

「ーー」


またしても的外れな事を言う小娘に私は呆れていた。


「き……貴様、我は魔王ヤミンであるぞ! 小娘であろうと知っておろう」


「ほんっとにキミおもしろいね! それじゃあワタシが小娘なら、キミはチビだね」


赤毛の少女はケタケタ笑いながら、顔を下から覗き込んできた。


「マイゴになったの? だったらついてきて! こっちだよ」

「な……待て! 話はまだおわってーー」


言い切るよりも早く、小娘に手を引かれて、森の奥へと駆け出した。


「貴様、名をなんと申す」

「リタだよ! キミの名は?」


「……ヤミンである」

「よろしくね!」


アウレリウスよりも遥かにせっかちな小娘であるが、敵意は感じない。どうやら魔王の事を本当に知らぬのであろう。

しかし、私にはやらねばならぬことがある。


「リタとやらーー」

「ついたよ!」


森が開け至って大きな民家が目の前に現れた。

魔王城とまでいかないが大きく見える。

さぞや貴族の家なのだろう。


「貴様らは、何故、我が話してる最中に口を挟むのだ」

「キサマじゃなくてリタ。あとキサマラってワタシしかいないよ? 」


「……もうよい。我にはやらねばーーなんだと……!」

「さ上がって上がって! 」



以前、リストワールがまだ戦えていた頃に、人間の子供を拐って人質にするなどと、卑劣な戦略を企てる家臣がいた。


魔族であろうと人間であろうと、子は宝だと、私は怒りのあまりに投獄した事をがあったのだが、本当は拐うべきだったのではないかと、今になって思う。


そして、引きづられる様に招き入れられた我は今、人間の()と小娘に取り囲まれながら、小汚いイスに追いやられ、果てには夕食が我の前に差し出されていた。



机の上にはシチューに丸いパンが並べられており、外で見た家の大きさとは不釣り合いな、貧相な食事である。

やらなければならない事がある私には、この様に悠長に食事をとっている暇などなかったのだが、我は気付いてしまった。


「のお人間共よ……我は貴様らに、どう写っておる」


「ほんっと可愛いわねこの子! アナタ今日は家に泊めてあげましょうよ」

「そうだねマリー。キミも夜の外は魔族が出て危ないから」


やはりそうなのだ。

入口で見た鏡に映て気づいてしまった。


「我は人間であるか?」


「何を言ってるんでしょうねアナタ?」

「きっと、子供たちの間で流行ってる遊びなんだよ」


「って……うわぁ! キミだいじょうぶ!」


世界が暗転し意識が遠のいていく中、我は中にあった困惑は、暗い闇に覆われていった。


アウレリウスよ。 貴様は何故我を苦しめるのだ。




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