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時花神(はやりかみ)  作者: 月風テフカ
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シーソー公園

「・・・!」


気が付くと家の近くの公園にいた。

先ほどまでは自分の家にいたはずだ。

格好も記憶にあるものと違う。

家ではジャージ姿だったのに、いまは黒いシャツと黒いパンツの全身黒尽くしである。


・・・失敗か。


先ほどまでと違うことがあるが、成功を証明するものがない。

周りを見渡す。するとあるものに気づいた。


シーソーである。


公園にシーソーがあった。

この公園は最近ではあまり見かけないシーソーがあり、子どものあいだでは「シーソー公園」とか「シソ公」などと呼ばれている。本来の公園の名前は別にあるが、子どもどうしで通じれば何でもいい。


地域に親しまれていたシーソー公園であったが、県内の別の場所でシーソーでの子どもの事故が起きたということで、数年前にシーソーが撤去されてしまった。


そのシーソーがここにある。


少なくともここは先ほどの時間とは違うことがわかった。

しかし、まだ成功とはいえない。

むしろ残った可能性のほうが大きい。


これ、走馬灯じゃないよな。


過去に戻った気がしているだけで、失敗して走馬灯を見ているだけの可能性がある。

失敗は死ぬ可能性がとても大きかった。

この黒尽くめの格好も死に装束なのかもしれない。

・・・まあ、死んでも仕方ない、とは思っていたけれど、できることなら死にたくはないしまだ死ねない。


さて、どうしようか


とにかく、いろいろと見てみないことには始まらない。

そもそも、この時間がいつなのかわからない。

シーソー公園があるから、公園が出来た年より後なのはわかる。

公園にいる人の格好からもそこまで昔ではないと思う。


コンビニでも行くのが無難だろうか。

ふと所持品を調べてみる。


金がない。というか何もない。


黒尽くめの格好でコンビニに入って、奇異の目で見られたくない。

目立つ行動はどうしても避けたい。

なぜならそれが過去に行くことができる条件だと思う。


時間旅行が行なわれていることは過去・現在・未来において誰にも知られてはならない。


時間旅行は確立された方法がないのではない。確立していないことが条件である。

並行世界への分岐は未来に向かうことが前提である。そのため過去に分岐することもなく、過去に戻ってフローチャートをやり直すこともない。

しかし、時間旅行が確立された場合、その前提が崩れてしまう。無数の過去への分岐が織りなすことはどの時代どの場所での結果を覆す可能性を永遠に持ち続ける。

無数の過去改変が未来で無数に起きる可能性があるということは、いずれ時間旅行を確立した事実を覆そうとするものが生まれる。それだけならいざ知らず、人類史を覆すものが現れることが必至だ。


その時間旅行の矛盾が生まれないために、時間旅行の方法は一般化できず、確立もできない。たとえ、方法として正しくとも、一般化されたあるいは一般化される方法では時間旅行はできないと考えられる。

時間旅行ができるという事実すら流布されることはあってはならない。なぜなら人間の探求心を侮ってはいけないからだ。

何しろ鳥が空を飛べるなら自分たちも飛べるはず、と思うような種族である。誰かができるなら自分たちにもできると考えるのは人間の本能なのだろう。


あくまで時間旅行は物語のなかだけのファンタジーという地位を変えてはいけない。

だから時間旅行の理論や方法、その事実は秘匿しなければならない。

そのために時間旅行のための装置や理論はすべて読み取れないように処理してある。

その処理で死んでいる可能性があるので失敗は許されないのだ。


なぜここまで詳しいのかって?


そういうものだと本に書いてあった。

・・・意味がわからないだろうが、図書室の本棚で偶然見つけた本に書いてあった。

自分だって時間旅行についてはファンタジーやSFの領分だと思っていた。

しかし、噂話で聞いてしまったのだ。


時間旅行は誰にでもできる可能性がある


若者の都市伝説の一つだったのだろう。

信じてはいなかったが調べてみたら、異様に詳しい本に出会えた。

もちろんその本だけで時間旅行ができるわけではない。

時間旅行が事実であるかのように書かれたあの本が都市伝説の発端なのだろうか。


これからどう行動するべきか。


目的は一つであるが、時間と場所が合わなければ意味がない。

ベンチで座って考えてみても何も進まない。いや、時間は進んでいると思うけど。

まずはこの時代の自分を見つけなければ。

そう思い立ち、顔を上げると目の前に少女がいた。


「藤村歩さんですか?」


自分の名前を呼ぶ見ず知らずの少女がそこにいた。

ランドセルを背負っており三・四年生くらいだろうか。

時間旅行を誰にも知られてはならないと決心したばかりだというのに、

・・・気づかれた?どうやって?

この時代に存在しないはずの人間をどうして知っている。


「君は・・・」

「私の名前はスミカです。あなたをサポートしにきました。」

藤村ふじむら あゆむ 高校二年

汰木ゆるき 澄佳すみか 小学生三年生

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