第八話「祭りの場所は大広場」
項垂れながら広場に到着すると、もう結構な数のプレイヤーとバディがいる。
俺がこの世界に来たときよりも多くの人がこの広場に集まっているみたいだった。
遠巻きに中央を見てみると、そこにはいつの間にか特設ステージができている。
あそこで運営の重大発表があるんだろうなって思っていると、あっという間にどんどん人が増えてゆく。
アオが人ごみに流されないように俺の手をギュっ、っと掴んでくる。
手のひらに突然感じた暖かさに振り向けば、そこには頬を赤く染め無言で俯く彼女。
その様子を見ていると胸がキュッとして、じんわりと熱がこみ上がってくる。
「うんしょ、ふぬぬっ! うーん、見えないや」
アオは一生懸命背伸びしているが、周囲の背が高くステージが見えない。
そんなとき、カトラスが悪態をつく。
「遠くて見えやしねぇ」
「君の身長ならここからでも見えるだろうに」
「オレは近いとこで見たいんだよ! オラッ! 道を開けな」
カトラスの表情、体格、装備を見て、周囲の聴衆がさっと道を開け、身を引いていく。
というか、みんな彼女に引いている。
「いやぁ、うちの子が本当にすいません」
ゴルはペコペコと頭を下げながら、杖を突いてそんな彼女についてゆく。
カトラスに振り回されてるときのゴルは腰が低いなぁと思っていたが、その割にはズンズン前方に進んでいくもんだから、意外とちゃっかりしているのかもしれない。
進んでいく途中、ゴルは僕らにおいでと言わんばかりに目配せ。
周囲の人には申し訳ない気もしたが、その好意に甘え、俺はアオの手を引きついて行く。
どんどん進んでいくカトラスとゴルを俺らは追いかける。
時々アオを気にかけつつ、少し早足。
「この辺でいいか」
なんて言って、カトラスはほぼ最前列で腰を下ろす。
先客の人たちには申し訳ないような気もしたが、ゴルも『ここ空いてるよ』なんて言うもんだから、周囲に小声で謝りつつ地面に座る。
遠くからは見えなかったが、ステージ上にはカウントダウンの数字が浮かんでいる。
それがゼロに近づくにつれて、スモークが焚かれ始めたり、緑や青のレーザー光がステージ上を彩り始める。
まるでライブの開演前だ、なんて思っていると、ノリのいい待機BGMがかかり出しカウントダウンに華を添える。
いつの間にかプレイヤーたちもカウントダウンをし始め、広場の盛り上がりも最高潮に。
「全く、吞気な奴らなこって」
「まぁまぁ、カトラス。水を差してやるなって。みんな楽しんでいるんだから」
斜に構えたバディもいるようだが。
ステージ上はスモークで閉ざされ、煙の中を色とりどりのレーザー光が暴れまわっている。
ステージの数字が十を切った。
数え下ろされるのに合わせて、俺の鼓動も高まる。
『三! 二! 一! ゼロ!!!!』
ライトが煌々と輝きだし、煙の中に人影が浮かび上がる。
「レディースアンドジェントルメン!! 【フェティシズム・フロンティア・オンライン】β版をプレイしていただいている皆様、この度はお集まりくださり誠にありがとうございました!! 私はこの発表の司会進行を担当させていただきます、GM烏羽睦月でございます!」
スモークを切り裂き、舞台上の姿を現した男は、
「あっ!!!」
全身白スーツで決めた、おっさんアバター。
忘れもしないその姿。
この世界で最初に出会った男。
そして、俺から10万を掏った男だった。
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