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二度目
受験を翌週に控えた雪の降りそうな寒い日に、少しの息抜きにと放課後の部活に顔を出した帰り道。コンビニに寄ってあんまんを買っている時だった。
あ、という声がしてレジの店員に向けていた視線を背後に動かすと、少し悲しそうな顔の男子高校生がいた。
あんまんを食べたかったのかもしれない。レジ横のショーケースにはひとつしか残っていなかったから。
そんな顔をされても、私だってあんまんは食べたい。他の中華まんではなく。
良心が痛むと言うほどではないが、少し気まずいので謝罪を込めて小さく会釈しておいた。
コンビニを出て駅に向かっていると後ろから声をかけられた。
「あの、すみません、僕のこと覚えてますか?」
少し慌てたようなさっきの高校生、顔を見てもわからない。
「どこかで会ったことあります?」
「えっと、去年の夏祭りで」
「夏祭り…神社の?」
「そうです、神社の」
あの日は部活のメンバーと行って、花火を見て…あ、あのカステラの。
「もしかして、屋台を探してた人ですか?」
「そう、その人です」
顔もはっきりと覚えていなかったし、まさか再会するとは思わなかった。