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現段階
隠れ家をイメージしたようなこじんまりとした居酒屋には、グループ向けの座席の他に4人分のカウンター席がある。
仕事終わりにここのカウンターで週末を過ごすのが、私の最近の習慣になっている。
注文した煮魚を食べていた時、私の耳に入ってきたのは、何らかのサプライズに成功したらしい男性たちの喜びの声。
たまたま居合わせたのであろう周囲の客も、拍手をして場を盛り上げている。
私は雰囲気に合わせて祝福出来るような気分ではなく、その一員になることが出来なかった。
幸いにも、私の方が店の出入口寄りに座っていたためそっと席を立ち、会計を済ませた。
空気の澄んだ寒い夜だった。
どこからか響いてくる夜間工事の音が耳に染みて脳内にじわりと広がったような気がした。
さっきのが聞き間違いだと良い。
もう間もなく天気が荒れることは、今日は考えたくもなかった。