表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/40

xyz

境界線上の私達。

 平行世界の私が鏡の中から語りかけてきた。


 あちらの世界はこちらの世界とほんの少しだけ違う分岐を辿った結果、崩壊寸前らしい。


 私は馬鹿馬鹿しくなって鏡の前から去った。別の世界の私が助けを求めてきたところで何も出来ることはない。鏡の中の私はしきりに「x軸が」だの「y軸が」だの喚いているが、静かに崩壊を待つことは出来ないのだろうか。


 こちらは夕食のメニューを考えていた方が有意義だ。今日は彼が出張から帰ってくる日。彼の好物をたくさん作らなくてはいけないのだから。


「ただいま」


 戸の開く音と彼の声が響く。予想以上に早い帰りだ。食卓にはまだ何も用意出来ていない。


 焦る私に気付くことなく、彼が部屋に入ってくる。その瞬間、先程まで別の世界の私が映っていた姿見が大きな音を立てて砕け散った。それと同時に、彼の体がブツリと嫌な音を立ててかき消えてしまう。


 私は突然の事に膝を折り、砕けた鏡片を呆然と見つめた。足下に散らばる小さな鏡の中では、彼が必死の様相で内側から鏡面を叩いている。


 おい私、z軸も狂っているのなら初めからそう言ってくれよ。


 鏡の欠片を拾い上げて照明に透かすと、彼は次第に見えなくなっていった。

x=点

xy=面

xyz=空間

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ