アップデートお断り
高校デビューする派しない派。
彼とは中学が同じだった。さらさらの黒い髪と、いつも困ったように下がっている眉が好きだった。私達はお互いに人との付き合い方に悩んでいて、だからこそ気持ちを分かり合えていた。言葉数が少なくても心が通じているような、自分で言うのもなんだけど気の置けない仲だったと思う。
まあ、そう思っていたのは私だけだったというのなら、今の状況も仕方がない。
私は彼の通う高校から少し離れた女子校に進学した。久しぶりに会った同級生にはあんたは変わらんね、とため息をつかれるほど変化はない。
けれど、彼は変わった。変わってしまった。なんだか髪も性格も明るくなって、友達もたくさんできたようなのだ。昔の彼を知る立場からしてみれば喜ばしい変化なのかもしれない。けれど私は寂しかった。寂しくて辛くて終いには彼と連絡を取らなくなった。どうやら私は置いてけぼりにされてしまったみたい。
そんな彼と駅前でばったりと会ってしまった。最寄り駅が同じなのだから仕方がない。彼は私に言った。どうして避けるのか。私は首を傾げた。私は彼の事が好きだった。今は失われた黒い髪と、自信のなさそうな困り眉の彼が。今の彼は私の好きだった彼を塗り潰して新たに上書き保存した存在だ。
「好きだよ。前からずっと」残酷な言葉を吐く彼は果たしてバックアップを取っているのだろうか。とりあえず私は一度再起動でもしよう。