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 充満していた有機溶媒の匂いは大きな爆発音とともに一瞬で複合物の焦げる匂いに上塗りされた。


 同時に上階からずどんと衝撃が伝わり、両足が跳ねるように浮きあがる。


 そのままごろりと尻もちをついて、私は大きくため息をついた。


 きっとまた彼が何かをやらかしたのだろう。


 この研究所一の器物損壊数を誇る彼の実験室ラボは、丁度私の実験室の真上に位置する。


 ゆっくりと立ち上がると、バタバタと忙しなく駆ける音がそこら中から響いてきた。恐らく大爆発だったのだろう、騒つく周囲の声に不安の色が宿る。


 彼は少し変わっている。


 研究に熱中すると寝食を忘れるだけでなく人格まで変わる。実験器具や高価な機械を壊すことなんてザラにあって、破壊神なんて呼ばれていたりする。


 人は彼を遠ざけたけれど、私は彼の研究者としての努力と情熱は認めているつもりだ。


 だからこうして半身を焦がして目の前に現れた彼を咎められない。


「先輩、出来ましたよ。とうとう完成したんです! 先輩に真っ先に見せようと思って」


 そう言って焦げた物体を手渡されるのだけれど、私と彼は研究分野が違うからこれが何なのか分からない。


 けれどとりあえず差し出されたそれを受け取ると嬉しそうに笑うので、しばらくは彼のペースに付き合ってあげようかななんて思っている。

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