信じられるのは金だけってね
微ファンタジー。
世はまさに騙し合いの時代と呼んでも過言ではない。
格差社会の片隅で不気味に育った義賊集団が、金持ちたちを鮮やかに騙して得た金をばら撒くようになったのはいつからだろう。
警察は機能していない。何故ならば多くの警察官は金持ちに握らされているか義賊と通じているからだ。組織内部で様々な争いが頻発し、もう誰も警察を信じていない。
信じられるのは現金。
もしくは金。
あるいは自分自身。
私は自分の勘を信じて生きてきた。
「この金はすぐに足がつく。どうせ成金どもから掠めてきたんでしょう」
「正当なトレードで手に入れた現物ですよ」
「私、嘘つきと取引はしないの。さようなら」
裏世界の換金屋になったのは、家を追われ根無し草をしていた時にたまたまバイトをしてそのまま居着いただけで、特に理由はない。
それでも、騙し合いの果てにやってくる換金者を見るのは中々に面白いと思う。
初めて取引にやってきた目の前の彼は、たんまりと金が詰まった大きな革袋を片手に困ったように笑う。
「路銀が足りないんです」
「根無し草ね」
「人探しをしていて」
換金を諦めた様子の彼は緩く視線を寄越した。
「生き別れの姉を探しているんです」
「……へえ」
「小さい頃に離れ離れになって。こんな時代ですから、姉は口減らしのためにどこか遠くへ。親が死んでようやく会いに行けるようになったと思ったら失踪していたんです」
「汚い金まで掴んで、そんなに会いたいの?」
たったひとりの家族なんで。
そう言う彼の瞳は、私と同じ金色をしていた。
(金色の瞳はごく限られた血族に見られる遺伝だったりしたりしなかったり)




