表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/40

The Door to Hell

 the door to hellとはよく言ったもので、要するに地獄の釜のような煮えたぎる火山口のことである。


 灼熱の溶岩で彩られたそれを恐ろしく思う人もいるだろう。けれど私のような一部の人間にとっては究極の美であり、救いであり、システムであるのだ。


 愛好家、と言えば聞こえがいいかもしれない。火山口愛好家。まあ世の中にはそういう人もいるよね、なんて声が聞こえてきそうだ。


 しかし私にとっての火山口はただ愛好するためのものではない。それは地獄の口なのだ。要らないものを脳内でそこに捨てる、想像をする。するとその要らないものたちは地獄でくつくつと煮られて溶けてまとまりひとつになる。そうするとそれはもうかつての要らないものではなくなるのだ。


 私はいつもどおり「the door to hell」で検索し、出てきた画像を幸せな気持ちで眺める。


 夢、要らない。

 学校、要らない。

 友達、要らない。

 家族、要らない。


 全部ぽいぽいと捨てて溶かしてひとつの大きな塊にして、その名前のない物体と、私と、彼だけが世界に残ればいいのにな。


 そんな事を考えていたバチが当たったのかもしれない。地獄の在りようを勝手に決めるなと、そう言われているのかもしれない。


 死後私に言い渡された仕事は、彼の犯した大罪を浄化するための火山口を岩で塞ぐことだった。


 やはり救いだったのだ。


 私は岩を背負いながら、永遠に続くかのような幸福な気持ちで山を登った。

火山口愛好家と大罪人。

ラストはギリシア神話シーシュポスの岩のイメージ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ