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私はあなただけの幸せを望む

作者: わかこがわ

厨二病大爆発!!止まらぬ闇!!ない語彙!!読めば赤面!!!!



まどろみそうな春の日差しの中。放課後の気だるげでふよふよした空気。春の全てが私を寝かしつけに来ている、そんな陽気。そのせいだから、ほんのちょっと。ちょっとだけ寝

ダン!!!扉が開く。開き方が乱暴で叩き起こされた。

「怪我しました!!」

「うるさ!!!!!」

「そっちの方がうるさいー。ほら、はやく治した治した!」

一気にほんわりした雰囲気は変わった。それはもう騒がしく。

「もう、せっかくのシエスタだったのにー。また怪我ぁ?」

「はいはい、しえすた?の邪魔してごめんね。今回はねー…なんと!切り傷!」

そういって彼女は耳を見せた。耳たぶには血と血と血と…。

「ちょちょちょタオル!!」

上履きが急いだ弾みで脱げかける。タオルを取りに行くも時すでに遅し。血が制服のシャツについてしまっていた。あと床にもぱたぱたと跡がある。

「あ、ごめんなさい。すぐ気付いていれば…。」

「いいよ、気にしないで。ね?」

俯いた私の顔を覗き込まれた。長い私の前髪を透かして目が合う。すぐに逸らした。

「と、もかく!手当てするわね」

こんなの万年保健委員としてはすぐに終わる仕事だ。包帯を巻きながら私は尋ねた。

「ねぇ、これなにしたの?」

「あー、んとねー猫!!

引っ掻かれちゃった。」

「耳を怪我する離れ業を習得したようでなにより。」

「あはは」

乾いた笑い声が保健室に、この小さい部屋に響き渡る。気づいたらさっきとは一転して雨が降り始めた。

「予報通りみたいね。あめ。」

「え?傘どーしよう。ないの。」

「いいわよ私あるから、待ってくれるなら一緒に帰らない?」

「さーんきゅ!」


「じゃね!」

満面の笑顔で彼女は教室へもどっていった。足音が廊下に響く。多分今日の来客はこれで終わり。暇だわ…。




教室のドアには鍵がかかっていた。私のリュックを中に残して。

自販機のゴミ捨て場に私の傘があった。黄色がポツンと差し色みたいにあって遠くからでもわかった。引き抜くと、空のペットボトルもついてきた。下駄箱を開けると溢れるゴミ。わわっとつい声がもれる。慌てて拾った。その時に足首が痛んだ。─そうだ、これは朝引っ掛けられたときのか。腕は扉にはさまれたとき。耳は髪を切られたときに。

「いつつー。いたいな。はは。」

保健室は閉まるまであともう少しあるよなー。…暇だわ。


私は知ってる。耳を切られたほんとうの理由を。他の傷の理由を。保健室に来る理由を。

髪がバッサリ切られてて、痣がいくつかあって、分からないはずが無いじゃない。それでも、口にはしないのだ。ここにいる間だけは、楽しく過ごしていてほしい。今の状況なんか忘れてほしい。人間関係に疎いフリして私は口を噤むのだ。だって、私は、

私は貴方の幸せ だけ を望むから。


せめてこの場所だけは貴方を幸せで満たしていて欲しいの。

予鈴が鳴った。正門にはにこにこ笑う貴方が待っているから。はやく行かなくちゃ。


アドバイス(酷評)お待ちしております。

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