ⅤⅢ 救済
『早く……! 早く逃げないと!』
『動いてはいけません』
『あいつが来る! あいつが! 俺を殺しに来る! 殺すために来る! ここにいたら殺されるっ!』
『あいつとは誰ですか?』
『シニガミだ……俺だけを追う"死神"がいる!』
『ここは教会です。悪しきものは立ち入ることができません』
『どこにいても無駄だ。あいつは"俺の不運"。神の名を持つ怪魔だ。殺しても殺しても湧いてきて、どこまでもどこまでも、どこまでも追いかけてくる。目の包帯を取ってくれ! もうそこにいるかもしれない!』
『何もいませんよ?』
『君もここにいたらだめだ! 道連れになる! 手を離せ!』
『私はあなたのそばにいます』
『離せっ!!』
『私がそばにいます。死神がきたら教えましょう。まずは傷を癒しなさい』
『……』
『力を抜いて。ゆっくりと息をして。私があなたを見ています』
『……』
『ここには何もいません。あなたも生きています。私も生きています。フェリス様もあなたを見守っています。だから、ゆっくりおやすみになって』
『……ただの女の子じゃ何もできない』
『例えその死神に敵わなくとも、何かはできます。何かができるから、私はあなたのそばにいます』
『……。わかった。少し、休むよ……変なのが来たら、教えてね』
『はい。私はここにいますから。あなたが救われるまで、そばにいます』
『……メルー、ちゃん』
『はい』
『……ありがとう』