ⅤⅠ 夜事(遊び人視点)
ベッドシーンあります。R15の範囲で。
ずっと欲しかった女を手に入れた。
いや、まー。さすがに予想外。まさか、いきなりあんな接点持っちゃうなんて。
ちょっとくらいお話できたらいいなーと思って、あの子の部下誘って、賭け事してたんだけどさ。口説き落とすための情報収集も兼ねて?
部下の子と賭けで盛り上がったから、ふざけて性的なことに誘って乗らせたら勝った。
……そこで、俺の狙っていた女が現れた。
メルゼルタ・ディーナ。
中規模な町の一角で聖騎士業をしている、銀髪碧眼の娘。
……いや、もう、娘って年ではないだろうけど。この町に久しぶりに来てみたら、運命の再会しちゃったから。
ああ、もう。びっくりするくらい美人になってた。堅実で人情に溢れる性格、流れるような長い髪を持つ気高い容姿。
両方が俺の好みにどストライクで、思わずごきゅりと生唾を飲みこんだ。
町から町に流れながら、色んな女抱いてきたけど。昔に惚れた上で、さらに惚れ直した女は格別だ。
けど、敷居が高いってレベルじゃない。
聖騎士は神に身を捧げるものとして、原則恋愛を禁止している。秘め事は何があろうとダメ。聖騎士といえば、童貞集団、処女集団として有名だ。
そんな女に酒呑み勝負に勝ったら食わせてほしいと注文して、メルゼルタは勝負に乗ってきた。え、何これ。 何この展開。美人聖騎士いただけるチャンスって、どんなラッキーイベント?
俺も本気出した、さすがに。
勝てば超好みの女抱けるって条件だ。死ぬ気で酒くらい呑む。
メルゼルタは呑み比べに自信があったんだろう。強かった。俺も若干心折れかけた。勝ったのが奇跡。本気の俺、やるじゃん♪
あたふたしている他の聖騎士ちゃんたちに「じゃー、約束通り俺の勝ちだから。じゃーねー」と手をふりふりして、酒に潰れた女を担いだら、尾行されないうちにそそくさと酒場を離れた。
おぼつかない足取りで何とか泊まってる宿に帰投すると、ちょうどメルゼルタも少し酒が抜けたようだった。ふらつきながら壁に手をついたかと思えば、いきなり聖騎士の白い甲冑をはずし始めた。
あっという間に下着まで脱いで、艶やかな体を空気に触らせて。天窓から差し込む、月の僅かな明かりを反射させながら、
「……やるならさっさとやれ」
誘われた。
「もちろん」
スイッチ入ってちょっと乱暴になったが、俺はメルゼルタをベッドまで引っ張って押し倒した。ぎいぎいと古い木のバネを鳴らし、熱いキスを堪能しながら俺も服を脱ぎ捨てていく。
メルゼルタの太腿に手を伸ばすと、
「っ、いや……!」
メルゼルタは急に高い声を出して身をよじらせ、俺の胸から逃げようとした。
酒気を帯びて赤くなった顔で、うるうると涙の溜まった目で、俺を見上げて。
「……ほ、他は何をしても構わない。だから……処女だけは……」
……ははっ。
しょうがないなー! わかってるよ!
聖騎士様が純潔を破ったら、役を降ろされてちゃうからね。ただの性交だけじゃ済まない、でかい責任だ。
けど、口に出して言わないでよ。そんな目で俺を見ながらさ。嗜虐心がそそられて、取り返しがつかなくなるだろ?
「オッケー。他は何をしてもいいってことね?」
メルゼルタはこくこくと頷いて、俺の背中に手を回した。
はは。震えてる。ウブで可愛いじゃん。
「なら、朝までちゃーんと付き合ってよ?」
……本番なしでも、結構ヌけるもんだなあ。
メルゼルタも、「やって」と頼んだことは全部聞き入れた。
うーん、この背徳感! たまらないね。聖騎士様にこんなことさせちゃっていいのかなって。エロいのなんの。
最終的にはシャワーを浴びながらも。出てるところは出てるもんだから、よかったよ。おっぱい万歳♪
空がぼんやり明るくなってきて、いざ共に眠らんと横になった時に。ふとあの銀色の長い髪がはっきり目に映った。
……またむらっときた。俺の欲望は底を知らない。いや、下卑た気持ちが大量生産されて、需要が追いついていないのかも?
そういや、髪でヌいてなかったなと。
思い立って「髪でシていい?」と聞いた。「……好きにしろ」とか細い声が返ってきたから、さらりとした髪を指ですいて、また楽しんだ。
憧れの女が隣に寝てるってだけで、ふわふわしたような、いい気分だ。
……心が揺れた。
やっぱヤっちまうか、と。またこんな夜を過ごせるとは限らない。聖騎士の処女っ子抱けるチャンスなんてまずないだろうし。
けど、俺にこの子の人生を奪う資格なんかない。責任もとれない。金もそんなにないし……働くのもやだし。
今日はたまたまの大当たりだ。
俺は"運"は信じているが、信用していない。
だってさ。ああいうの故意に操作すれば、確率変わっちゃうじゃん。
引き際を定めて、慢心を避けないとね。人は悪い運に呑まれてしまう。
……ま、そこらの悪い運に飲まれるだけなら、まだマシか。少なくとも俺はね。昔は馬鹿な高みを目指して無茶やって、もっと酷い目にあってたし。
……。俺がフェリス教の信者に手を出したってバレたら、あの方にぶっ殺されるかな?
でも、まー。改宗迫ってるわけじゃないし?
俺は何の陰謀もない、超個人的な、片想い的な理由で、彼女と接触したかっただけだし。
前々から目えつけてて、めちゃくちゃ濃密にいちゃつきたいだけ。
メルゼルタ。俺の愛しい女神様。
手を伸ばした俺は、身の程知らずか?
「変態ひとりだけじゃん」「あらすじ詐欺」とか言われないうちにネタバラシしておきますが、episode1の変態は一名(主人公)だけです。今後のepisodeで出てくる主要キャラは全員変態です。乞うご期待(?)ください。
次回はメルーさん視点に戻ります。