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流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
虚無の天使は遊び人と契らない愛を交わす(全13話)
47/49

XⅠ_持論

再び現れる死神。



「くそ! 無理だ! 近い!」


 息絶え絶えに、そう叫んだ。


 俺たち三人は、何の変哲もない山の街道を全力疾走していた。


シニガミが傍にいる。慣れていながらも冷や汗が出るような……嫌なあの空気を感じる。


 先頭を走るラティロが突然路上から外れて、林の中に入っていく。俺とマイフが後を追う。


 正規の道からだいぶ離れたところまで来ると、ラティロは走りながら右手を横に伸ばし、親指以外の四本の指を立てて、『止まれ』とハンター語で合図した。


「……はあ、ここなら、通りすがりの、人を、巻き込むことも、ない。戦う、準備を、しよう……」


 息を整えながら、ラティロがばっと荷物を投げ降ろし、ぱっとクロスボウの弓を広げた。


 それぞれの武器を持ち、背中合わせになって全方角を目で確認する。


 臨時の戦闘体勢。シニガミの姿を確認したら、二人には「自分の身を守ることだけ考えて」と言ってある。いつものことだけど。


 日が差す昼間。呑気な鳥の囀りが、木と木の間に響く。

 張り詰めた空気が俺たちの周りを包んでいる。


 あと何分後だ? 十分後? 三十分後?

 一時間以内には間違いなく来そうだ。


 シニガミの復活が今から十九日前。かなり移動ペースを上げて動いていたんだが、結局は何処かで追いつかれてしまう。休憩で立ち止まる時間がロスになるから、眠る時は馬車を使うこともある。この進度を維持すると、倒してからだいたい三、四週間周期でシニガミに会うかな。今回はちょっと早い。


「……」

「……」

「……」


 無言。風が木の葉をさわさわと鳴らした。血液を巡らせる心臓が少し平常に戻ってきて、ふうと肺に溜まった息を出す。


 シニガミは何処から来るのかわからない。すごい時は空から降ってきた。川から忍び寄って水鉄砲を飛ばして来たこともあるし、切り立った崖をよいしょと登ってきたこともある。あの時はすぐ蹴り落としたが。


「普通に現れろよ」と思っても、気まぐれにドッキリを仕掛けてくる。


 ぱきっと、小枝を踏む音がした。気配がある方に視線を向ける。動物か? シニガミか? 普通の怪魔は、この時間帯にまずいない。


 びゅっと何かが木の陰から飛んできた。それを剣で切り裂くと、ちゅっと酸っぱい匂いの飛沫が散る。


「うわっ!」


 顔にかかった。強い香りが目にしみる。


「……これは、枸櫞(くえん)?」


 ラティロが正体を口にする。枸櫞はぼこぼこした楕円形の果物で、よく料理に添えたり、水に汁を絞って飲んだりするものだ。


 枸櫞がまたぽいぽいと飛んでくる。皮が硬いから、当たると地味に痛い。


「っ、シニガミ! そこにいるんだな!」


「秘技・果物投擲♪」


「食べ物を粗末にするなよ!!」


 自分の懐から投げナイフを抜き取り、枸櫞の飛んでくる木の傍をしゅっと掠めさせる。


 果物攻撃が止まった。数拍の間のあと、ひょこっとシニガミが顔を出し、全身像を現す。右手にはいつもの武器を持ち、左手でぽんぽんと枸櫞を弄んでいた。

次回は下劣なコメディしかありません。

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