Ⅳ_憂色
「……はあ」
俺の腕に三回目の傷をつけた後、シニガミが疲れたようなため息をつく。退屈が過ぎてきたようだ。
「やっぱ見捨てられたっぽいね。そりゃそうか。スロスを神様にしたいなんて思う奴いないし」
誰のせいだ。
「俺のせい♪」
……くそ。腕が動けば、ぶん殴れるのに。
「あとちょっとで死ぬかな? 早く死にたい? まだ頑張れる? ん?」
……。
「みんな、スロスが野垂れ死んで欲しいって、思ってるのかもね? スロスを襲った怪魔の集団も実は刺客だったり? "怪魔憑き"で厄介者の神様候補を、合理的に、葬るためにさ?」
……。
「あは♪ まだ死にたくないって思ってるんだ? しぶといね。てか、俺がお前に殺意持てない理由、わかる?」
……。
「お前が死にたいって思わないから♪ それだけ。死にそうで死なないギリギリな目に合わせると、スロスは一番面白い顔をするよ♪」
……。
「逆に、死にたいって思ってみなよ? もっと楽しくなるから。俺が。ひゃひゃひゃひゃひゃ♪」
……。じゃあ、殺してみるか?
「投げやり♪ そんなんじゃつまんないよ。もっと絶望しなよ。救いを嘆きなよ。嫌というほど甘苦ぁ――――い地獄を、味あわせてあげるから♪」
……。
「けど、これは餓死ルートかな? 俺の勝ち? はははっ♪」
……。
「たくさんの人を愛して、たくさんの人を助けたのに。スロスにはだーれも、愛を返してくれない♪ 哀れで不憫な、可哀想なスロス♪」
……うるさい。
「いつもいつも、誰かを失う。もう傷つきたくないって、怯えてる。だから誰も信用できない。信頼もされない。裏切られて、ばっかりでさ……♪」
ふと、シニガミは真剣な表情になり、大鎌を手に握って立ち上がった。誰かを見つけたらしい。視線が遠くに向いている。
「……スロス。そこにいるよね?」
子供のような高い声。姿は見えないが想像はつく。空色の瞳。淡い青髪。清楚な白いワンピースを着た、少女姿の天使がそこにいる。
「遅くなってごめん。助けにきたよ」




