Ⅳ 疑念
昨晩の反省。
酔った勢いで公開した。
今は後悔している。
教会に辿り着くと、リーズェとエルマーが半泣きで駆け寄ってきた。
例の男の後をつけようとしたが見失って、途方にくれていたという。
「何をされましたか!? 酷いことされたんですか!? あの薄汚い変態男は今何処に!? ごめんなさいメルゼルタ様ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! 私も共に聖騎士を辞職致します!!」
と、リーズェは男のことを憎んだように喚いていたが、拳骨を落とした。
「人の悪口を言う前に、自分の所業を見直せ!!」
リーズェが私と共に辞職をしたところで、それは私への同情。自己満足の謝罪にしかならない。
「お前がやるべきことは、フェリス様に二度と同じ過ちをしないと誓いを立て、私を犠牲にした罪を背負っていくことだ!!」
そう怒鳴りつけた。わんわんと泣き出したリーズェをエルマーに任せ、背を向ける。
正教師様の部屋に向かい、事情を説明すると、すぐに検査をしてくれるとのことだった。
産師と"判定"を下してくれる妙齢の修道女が呼ばれ、正教師様を合わせた四人で、神告の間に行く。
神告の間は、真実の判定に使う部屋だ。私が純潔を失ったか否か、判別してもらう。
失っていれば"有"、失っていなければ"無"。この部屋はフェリス神に報告を上げる部屋であるため、決して偽りを口にしてはならないという規則がある。
……結果として、私の判定は"無"だった。
耳を疑った。産師にも確認されたが、子を孕むことはないだろうと言う。
神告の間を出てから、立ち会っていた正教師様に聞かれた。「協会に戻るまでに、異物感や痛みはなかったのか?」と。
そういえば。初夜を経験すれば、名残が残ると聞いたことがある。歩けなくなる人もいるそうだ。私は何も感じなかったが。
……もしや、昨晩に行為はなかったのでは?
思い出そうと頭を捻るが、やはり記憶はない。
これは天神フェリス様の思し召しだろうか。私はまだ聖騎士としてあってよいのだと。
……同じようなことを正教師様も申していた。
あの男にもう会うことはない(会いたくもない)と思っていたが、今一度顔を合わせて突き詰める必要がありそうだ。
正教師様には「女聖騎士を下卑た目で狙う、異国風の不審な男が町にいます。怪しい動きを見せたら捕らえて尋問するのが賢明かと」と、お伝えしておいた。
作者はお酒飲めないんですけどね。
飲める人がうらやましいです。