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流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
虚無の天使は遊び人と契らない愛を交わす(全13話)
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Ⅱ_双極


 戦いながら幸運を操る力を使った。だから、シニガミが来るのはわかっていた。


 師匠から与えられた任務をこなそうと、人間界に降りて、深い洞窟に潜った。ダークネスドラゴンという、なかなかの上級怪魔を退治しに来たのはいいものの。


 いくら何でも、ダークネスドラゴン三体の上にスケルトン三十六体、オーク百八十体、サキュバス二百二十体にいっぺんに襲われるとか、ありえないでしょ。


「あー、失礼、繁殖期かな? ここは怪魔に人気の乱交会場だっだわけね」と、一人でジョークを呟くほどだ。環境(フィールド)変化起こしちゃうんじゃないの? ってくらい、大掃除をしてしまった。


 不眠不休で剣を振るった。周りに生きた怪魔がいなくなったことを確認した直後、体に力が入らなくなって、仰向けのまま立てなくなった。


 ……幸運はあくまで確率操作だ。何のアクションもなく体が回復するものではない。


もっと、何年分もの幸運を一気に使えば可能かもしれないが。こうして不運(シニガミ)を呼ぶリスクがあるから、俺は過度な能力操作をしない習慣が身についていた。


 幸運を使った。助けを期待した。

 ……なのに、シニガミが先に来てしまった。


 シニガミは、俺の腕をぴんと横に伸ばさせて、拾った石でかりかりと皮膚を抉り、傷をつける。


 痛いんだが。反応する力がない。


「早く助けがくるといいね♪ 救援者は俺が追い返すけど♪」


 ……やっぱりこいつは?不運?だ。幸運を呼んでも、それを振り払おうとする。


 シニガミは血のついた石をぽーんと遠くに投げる。


「あ、石割れた♪」


 ……というかお前。暇なんだな。


「まあね♪」


 だが、シニガミはそれ以外何もしてこない。幸運がうまい具合に働いたのか? それともシニガミの気まぐれ? 珍しいこともあるもんだ。


 シニガミは大鎌を抱きかかえるようにして俺の頭のそばにしゃがむ。にやにやと微笑みながら、じっと俺を見下ろしている。


「さて♪ スロスはどうやって死ぬんだろうね? 俺は餓死に八ゼリカ♪ スロスはどうする?」


 ……。


「オークに食われる? ゴーレムに踏まれる? スライムに溶かされる? ポットに呑まれる? 偶然天井が落ちて圧死する? それとも、希望に縋って生きるに賭ける?」


 ……。


 お前は、何なんだ……?


「ん? スロスの友達♪」


 何故俺に憑きまとう?


「さあ? でも、俺スロスの傍にいるのが好きだし? そういうもんなんじゃない?」


 ……。


「というか、まずさ♪ スロスが知らないことを、俺が知ってるわけないじゃん♪」


 ……。



死神は特殊な心理を働かせるので、書くのが非常に難しいキャラです。

しかし、こんな「汝は我」的な存在は、嫌ですね。

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