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流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
episode2 狩人たちは遊び人といつしかの旅路を進む(全22話)
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ⅩⅨ_後悔


 アーロガンを放置するわけにはいかない。俺たちは、毛布に亡骸を包んで、ツフェリ町に戻った。


 教会の治療院に運んだ。「道中で見つけて、もう死んでいた」と、嘘とホントの合いの子みたいな話を伝える。


 遺体確認のためにやってきたアイニーちゃんから、あとで話を聞いた。アイニーちゃんが許可なく外出した理由をアーロガンが問い詰めて、浮気のことを吐いてしまったんだと。俺たちの居場所を聞いてから、「神域に行く!!」と、いきなり家を飛び出して行ったらしい。


 ……ということは、何故アーロガンが神域に飛び込んだのか、俺らとアイニーちゃん以外は知らないということだ。


「こんなことになるなんて……もう二度と口にはしません。スロスさんとの関係は、生涯の秘密にしていきますから」


 そうアイニーちゃんは言う。


「……これはきっと、天罰です」


 褐色の瞳に、俺は何も言うことができなかった。


 俺の勘だけど。アイニーちゃんはアーロガンに、罪悪感を伝えたんじゃないかな?


 アーロガンは束縛男で女の扱い方も最低だが、アイニーちゃんを好きだという気持ちは本当だろう。

例えば、アイニーちゃんが「あの旅人に迫られて逆らえなかった」「あなたを裏切るつもりはなかった」と言って涙を見せれば、アーロガンは愛しい恋人のためにいてもたってもいられなかった……というパターンがありえる。


 まー、実際はどうだろうね? アイニーちゃんが「無理矢理されたの!」と嘘を言ったのかもしれないし。

単にアーロガンの頭に血が上って、衝動的に俺をボコろうとしただけかもしれないし。


ミステリー小説もどきのように捻くれた推理しても、結果は結果なんだけどさ。


 アイニーちゃんのご両親も俺たちのことを疑わなかった。優しい人、というのは本当のようだ。アーロガンの実家でも、むしろ「息子を持ち帰ってきてくれてありがとう」と涙された。


 ……あれ? 何だこれ?

 こんなんでいいのか?


 俺は無意識に自分の能力を使ったのか?

 アーロガンの死体を見ながら、自分に問う。


 躊躇っていた、たった二週間の代償の延長。シニガミは機嫌さえ良ければ、罠に吊るされてたアーロガンを攻撃しなかっただろう。

何故って、あの時のアーロガンは「俺にとって存在すると困る相手」だったから。


『さあ、早く♪ 死んじゃったらもっと幸運が必要になるよ♪』


 ここにいないはずの声が聞こえた。


"幸運を操る"力。

俺の与えられる幸運は無尽蔵。


 能力を使えば、死者の蘇生も可能だろう。


 ……けど、それには何十年分、何百年分と必要になる。もっと使うかもしれない。

 俺なら絶対に助けられる。助けられる。でも。


『あらら♪ 殺すの? 助けないの?』


 黙れ。殺したのはお前だ。


『人のせいにしないでよ♪』


 これではまるで口封じだ。


 使う限界を絞って。自分の都合で決めて。

 使い所を選んでしまう俺は、身勝手なのか?


 ……土葬のために運ばれていくアーロガンを見送るだけだった。

真相は闇の中。

次回、ep2の最終話です。

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