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流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
episode2 狩人たちは遊び人といつしかの旅路を進む(全22話)
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ⅩⅦ_憤怒

死神は本気出すとやばい。


「……ねえ? 何やってんの? お前」


 アーロガンが声の主に振り返る。


 と、同時に、シニガミの武器で腹を横殴りにされ、アーロガンがズドーンと転んだ。


「うごばっ!?」


「何やってんの? って聞いてんの。答えろよ」


 俺はアーロガンの手から解放されて、どさりと地面に横倒しになる。「げほげほ」と咳き込む俺を無視して、シニガミはアーロガンに近づいていく。


「な、な、な、何だ、お前は……?」


「質問に質問返すな。スロスに何をやった?」


 シニガミが怒ってるのは明らかだ。声に気迫がある。アーロガンは尻をついたまま、ずりずりと足で後退りする。


「お、お前……怪魔か!? 私を誰だと思っている!」


「アーロガンって奴だろ? スロスに女寝取られて、ブチ切れてここに来たのか?」


「!? 何故それを知って……?」


「けどそういうのどうでもいいから」


 シニガミはぐるんと大鎌を大きく振るい、俺を掴んでいたアーロガンの手首をざくんと切り落とした。


「っひうぎゃあああああああ――――――! あ、ああ、手が、俺の手がぁ――――!!」


「お前さ。何スロスに手え出してんの?」


「い、あ……!?」


「お前スロスの何なの?  不運なの?  横槍入れるとか何考えてんの?  スロスを嬲るのは俺の役目なんだよ。今スロスと遊んでんのは俺なの。スロスに余計な傷つけんじゃねえよ」


シニガミの大鎌の刃が、ぼっと黒く燃えた。


「死ねよ。死ね。邪魔すんな」


「っ、おい、逃げろっ!!  その鎌に触れちゃダメだ!!」


俺の叫びも間に合わず、アーロガンは胸を切られた。血飛沫は舞わなかった。代わりに傷口から黒い炎が揺らぎ、糸が切れた人形のようにどさりとアーロガンが倒れ、瞳が生きた動きを止める。


 ――――シニガミが俺に背を向けている。


 俺は体に力を込めて立ち上がり、剣でどすんとシニガミの心臓を貫いた。


「がはっ……!!」


 シニガミは血を吐く音が混じった声を上げてから、「いっ、てぇ……囮、作せ……かよ……!」と悪態のようなものをついて、すうっと煙になった。


 ……シニガミを倒した。

 ……けど、犠牲が出てしまった。




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