ⅩⅣ_遊戯
ツェフェリ町近くの神域に大した怪魔はいないらしい。あの骨を打ち鳴らすような鳴き声も少なくて、ほとんど静かだ。
手持ちの剣の柄をぐっと握り、サブウェポンのナイフに鎖がついているか触って調べ、何度も小ナイフが揃っているか確認する。
あいつとは何百回と戦っているのに、未だに慣れない。食べてからもう一時間以上立ってるから、緊張でリバース、なんてことはないだろうけど。
……今は一人。一人は苦手だ。悪いことを考えてしまうから。誰かをおちょくってふざけていた方が、明るい気分でいられる。いられるような気がする。
俺って結構、ネガティヴ思考なんだよね、これでも。前向きになろうと努力してるつもりだけど。
暗い気分になる自分は嫌いだ。首の代わりに胸が締められて、苦しいだけだから。
……実はもう傍にいるんじゃないか? もしくは、ラティロとマイフの近くに潜んでいるんじゃないか? 実は町の方に向かっていたり?
……あー、俺の馬鹿。あいつは俺の考えが読める。何も考えてはいけない。
嫌な予感を実現するのが、俺の不運だ。
「別に、全部が全部俺のせいってわけじゃないけど?」
「っ!!」
しゃっと剣を抜いた。
「スロスは悪いことを、何でも俺のせいにしようとするね。俺一応"神"の名はあるけど、怪魔だし? すごい神様みたいに全知全能じゃないよ?」
声の元を耳で辿り、振り向く。
俺の後ろに、黒い外套を羽織る男が立っている。絵に描いたような"死神"。フードを被り、身の丈以上に長い柄の大鎌を、片手でぶらんと握っている。
「あはっ♪ まあ、嬉しいからいいけど。俺からすれば、『お前のせいだ!』ってのは褒め言葉だから♪」
「……シニガミ」
俺と瓜二つの顔をした怪魔・死神。異なるのは、髪が真っ白なストレートで、色素のない銀色の瞳を持っていることだ。肌は褐色というより、灰色? 死人のようにくすんだ色をしている。
「スロスを泣かせるためなら、喜んで殺戮するよ♪ 俺はスロスのこと愛してる……♪」
「黙れ気持ち悪い」
「いやん♪ フラれた♪」
両腕を抱いて、からからと愉快そうにシニガミは笑った。ふざけやがって。普段の俺みたいに。
「ああ面白っ♪ さてさて? 今回は何して遊ぼうか? また鬼ごっこ?」
シニガミはぐるりと辺りを見渡した。
「ここいいね♪ 不気味な感じが出てて。山頂の方より霧は薄いけど、雰囲気は十分♪」
「ご満足いただけて何より。お好みの環境でよかったね」
「スロスの仲間が罠まで張ってくれてさ♪ アスレチックみたい。スロスが遊ぶ気満々の時は、俺も超楽しいし?」
「夜が開ける前に仕留めてやる。来い!!」
がっとシニガミの横をすり抜けて、俺は走り出した。
「そっか、ここに罠はないんだっけ? 土俵まで案内してくれるなんて、今日のスロスはやけに親切♪」
ばさっと外套を翻して、シニガミが追ってくる。
次回は白熱バトル!
狩人たちvs死神です!




