表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
episode2 狩人たちは遊び人といつしかの旅路を進む(全22話)
28/49

Ⅻ 火遊び

アイニーちゃんは目覚めたようです。




 シニガミが現れるまで、あと三日。


 昼が過ぎて、夕暮れ前の七回の鐘の音が耳に入る頃。手持ちのナイフの手入れをしながら宿に引きこもっていると、とんとん、と扉が叩かれた。


「はいー。どなたー?」


「……スロスさん?」


 え、アイニーちゃん? ばっと砥石やナイフを布に包んで隠し、急いでドアを開けた。


「……こんにちは……」


「やあーアイニーちゃん。あれ? 外出禁止にされたんじゃなかったの?」


「ええ、でも。アーロガンの目を盗んで抜け出してきました」


 白い柔らかそうな上着と黄色のワンピースを着たアイニーちゃんは、木箱に包んだ菓子折りを渡してきた。


「改めてお礼がしたくて。町の商人に聞き回って、皆さんがここに泊まっていることを知りました。ごめんなさい、脅迫尾行(ストーカー)みたいで……」


「いやいやー! むしろわざわざありがとう」


 野郎型の変態怪魔に脅迫尾行(ストーカー)されるくらいなら、アイニーちゃんみたいな子につけまわされたい♪


「……ラティロさんとマイフさんは?」


「あー、二人は今神域に行ってるよ。下調べのために」


「下調べ……?」


「俺も午前中行ってきたの。でも、俺いると邪魔になっちゃうから先に帰ってきた。明後日あたりにちょっとやばい怪魔と戦わなくちゃいけないし、その準備のためにね」


「……そう、なんですか……」


 もっと深く聞かれるかなと思ったけど、アイニーちゃんはそこで話を切った。


「あー、ごめんね。お茶の用意しないで。よかったらその辺に掛けて」


「い、いえ……お構いなく……」


「いいから」と椅子を薦めた。


 廃油を吸わせた布と焚き木を火口に放り込み、マッチを擦って薪焜炉に火をつける。鍋に水を入れて熱にかけた後、「そういえばラティロの作ったパウンドケーキが余ってるな」と思って、料理とかに使う雑用ナイフで切り分けて、皿に乗せた。


「……スロスさんって、怪魔ハンターなんですか?」


「んー? 違うよー? 俺はただの浮浪者。ツレの二人は怪魔ハンターだけど」


「その、やばい怪魔というのは、どのような怪魔なのですか?」


「俺ね、"死神"っていう変態怪魔に追われてるの。だから今は、逃げるための旅をしていてさ。そろそろあいつ来そうだから、神域で待ち伏せて叩き潰す予定」


 シニガミのことを隠すつもりはない。


 昔、保身のために黙っていたら、人をシニガミとの戦いに巻き込んでしまったことがあるからだ。話を聞かれたら、もしくはシニガミが現れそうな時期に行動を共にする人がいたら、ちゃんと事情は話すって。そう心に決めている。


 出生や自分の能力のことは別のトラブルになりそうだから、積極的に言いふらさないけど。


「死神……?」


「そ。凶暴だし、危ないし、狩るのすっごい大変なの。俺たちが町に滞在するのも明日までかな」


「……? スロスさん、体調がよろしくないのですか?」


「んー? 俺は元気だよー♪ そう見える?」


「いえ! ごめんなさい……私の勘違いかもしれません……」


 切ったパウンドケーキにジャムをどろんと乗せて、「はいどうぞー。これラティロが作ったんだよ」と、テーブルの前に腰を下ろすアイニーちゃんに差し出した。フォークも用意する。「ありがとうございます」と細い声で呟いたアイニーちゃんは、少し顔が赤い。


「……スロスさんは、強いですよね。怪魔から助けてくれた時も、かっこよくて……」


「ありがと♪ みんなそう言うんだよねー」


「死神……という怪魔との戦いも、頑張ってください」


「……」


「スロスさん?」


 焜炉の前に戻り、まだ気泡も立っていない水を見つめながら、ぽつりと言葉を吐く。


「アイニーちゃんってさ。自分自身と話したことってある?」


「え?」


「自分と同じ顔をした、もう一人の自分が目の前にいてさ。ずーっと、俺を責めてくるの。何処にいても、何をしていても。記憶を辿って追いかけてくる」


「……?」


「でもそれは、他人のようにも感じて。脳みそ共有して使い方が違うだけって俺は思ってるんだけど、結局何なのか分からなくて。不思議なんだよね」


「……」


「それが俺の不運(シニガミ)なの。オカルトチックかもしれないけど、相手は俺の分身のようなものだから、俺くらい強くって。戦う度に疲れちゃうんだよね」


「……」


「……アイニーちゃんもさ。そんなに自分を責めなくていいよ。周りのどんな辛辣な言葉より、責めてくる自分が一番怖いから。何事も、決めるのは結局、自分だからね」


 人の振り見て我が振り直せ。やや説教くさいことを言ってしまったと思って、ふと明るい調子に切り替える。


「あ、シニガミ倒したら、補給のためにまた一日くらい町に泊まるよ♪ またすぐ出て行くけど。アイニーちゃんに会えなくなっちゃうから、何だか寂しいなー♪」


 かたん、と椅子から立つ音がして、アイニーちゃんが俺の傍にやってきた。


「……あの、スロス、さん……」


「んー?」


「……私も、です。いつもお茶を作ってくれたスロスさんと、もうお話できなくなると思うと、寂しくて……」


「あらー? 嬉しいな♪ 俺を求めてるの?」


「だから! ……だから、も、もう一度だけ……できませんか?」


「え?」


「い、今、誰もいらっしゃらないのなら……私と、その……」


 振り返る。アイニーちゃんは真っ赤な顔に意を決したような表情を浮かべて、そろそろとスカートをたくし上げた。


 すらりとした生足と、ちらりと見える白い逆三角形のなだらかな角。そこはぼっそりと少し濡れているような……気がする。


「…………」


「もう一度、だけ……だめ……ですか?」


 アイニーちゃんは恥ずかしそうに、ちらちらと俺を上目遣いで見ていた。


 ……まあ、うん。危険地帯でシたせいか、スリルびんびんだったからね。


 どうやらこの子は、目覚めちゃったらしい。


 従順そうに見えて、意外と危ない橋を渡りたくなるタイプか。まー、あんな旦那候補じゃ、半分しょうがない気もするけどね。ベッドでも乱暴なことしてそうだし。


「そう。俺の紳士的なテクに酔わされちゃったわけね?」


「……」


「……いいよー。おいで♪」


 軽く腕を広げる。アイニーちゃんは少し躊躇いがちに、ゆっくりと俺の胸の中に入ってきた。


 二度目となると、俺も色々危ないけど。しょうがないよね! 女の子の頼みを無下にはできないし?


 アイニーちゃんの頭を片方の手の平で包んで、舌を絡める口づけを交わした。そしてアイニーちゃんを椅子に掴ませて、後ろから抱えるような体勢になる。するすると俺の手を、白い太腿に登らせていく。


「……。ごめん、俺ちょっと余裕ないから、この前より激しくなるかも。大丈夫?」


「……はい」


 自分の体が重い。でも、アイニーちゃんが俺に夢を見てるなら、させてあげたいからさ。可哀想だしね♪


「……っ、あっ……!」


「もしダメそうだったら言って? 我慢しないで」


 貪るように女を食らい、俺自身も溺れた。


 あー。これ、いい……♪ そろそろあの二人が帰ってくるんじゃないかっていう緊張感が、また気持ちいー。


 アイニーちゃんも背徳心からか、あんあんとエロく狂った。


 折角だし? サービスでたっぷり楽しませてあげました♪♪♪


シリアスな展開になってきました。

死神戦まであと少し。

ここから面白くなっていきますよ!


次回。さらに明かされていく、スロスと死神の関係性です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=978209740&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ