ⅩⅠ_下衆
……禁句を口にした俺が悪かった。
ラティロは自分の見た目にコンプレックスを持っている。「本当に男だよね?」と聞けば、キレるのも当然だ。
「わたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男だわたしは男……」
ラティロは歩きながら黒い負のオーラを吹き出して、ぶつぶつと壊れた呪文を唱えている。いや、ホントごめん。
「ラティロー。まずその"わたし"っていう一人称改めてみたらだいぶ違うと思うよ? 性別ややこしくなっちゃってるから。ポニーテールはまー、精霊のナントカで仕方がないにしてもさ♪ それに、男なんだから俺の欲望くらい理解できるでしょ? ラティロも女の子にむらむらくらいするよね? なのに俺を一方的に変態扱いするのはどうかと思うよ?」
「さりげなく自己弁護するなよ! お前が見境ないなさすぎるだけだからな!? それに、わたしにも欲くらいはある! だがお前を見ていると、嫌でも自制するようになるんだ!」
「ロリコンのくせに♪」
「うるさい!」
「認めるんだ?」
「認めるが、わたしは断じて幼き淑女に手は出さない!」
「犯罪はだめだけど、我慢のしすぎは体に悪いんだよ♪」
「お前には倫理観というものがないのか!?」
スロスはサキュバスよりタチが悪い。なんて言われた。
「ラティロは育ちがいいのに、毒吐きだなー。マイフの方が絶対優しい♪ マイフは俺のこと責めないよねー?」
「屑の味方はしねェぞ、絶対に」
ばっさりと拒絶される。
「わざわざ責めたりもしねェけど。度がすぎて天罰下っても助けねェからな、オレは」
そう言ったあとに、ふとアイニーちゃんの方を見てから、小声になる。
「……あの女は気にくわねェ」
マイフは少し苛立ったような口調だった。
「一人で神域に飛び込んだくせに、何が『やめてー』だ。自業自得じゃねェか。怪魔に襲われても盗賊に好き放題されても、文句言えねェよ」
「正論♪」
「オメェは肯定する資格ねェよ!! 次何かやったら、追っかけて刺すからなァ!?」
「うわーい、怖ーい♪」
じゃあ、バレないようにしないと。
俺、戦いに自信はあるけど、スピードはマイフに勝てる気がしない。追われたらすぐ捕まる。
あ、マイフにあの子の悩みは話してないよ? 俺、口は堅いし。ハンターたちが知っているのは、アイニーちゃんが神域に一人で来たということだけ♪
まー、マイフみたいに? アイニーちゃんみたいなタイプを「面倒くさい」って感じる人もいるんだろうね。
俺は「落とせそう」ってまず思っちゃうから、そこまで悪い印象持たないけど。
いや、だってさ。女の子がいたら、つい摘みたくなるじゃん?
ここから後半に入ります。
お忘れかもしれないですが、episode2は鬱展開を辿ります。最後まで読み切る場合はご注意ください。まだコメディ状態続きますけどね。
次々回くらいで死神の核心にも触れていくので、どうかお付き合いください。




