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流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
episode2 狩人たちは遊び人といつしかの旅路を進む(全22話)
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Ⅴ_可憐

「いやぁー! いいものを獲った!」


 ラティロがご機嫌うるわしゅう。マイフと「イェーイ!」というノリで、ハイタッチまでしてる。


 さすが怪魔ハンター。二人とも、いい獲物を見つけると目の色を変える。マイフはいつでも真剣で、ラティロは戦闘狂いの一面があるな。どちらも、狩りに生きる男の姿だ。


 何かいいな。と、いつも思う。


「大物は狩りがいがある!」とテンションを上げて語り出すハンターの姿は、理解できないからこそ羨ましい。


 俺はどっちかっていうとびびりだから、手強そうな相手見ると緊張しちゃうし。


 強い強いって褒められはするけど、戦いが楽しいだなんて思ったことがない。面倒くさいとか、嫌だとか。俺はいつも投げやりだ。


 戦利品の羽根を束ねて、それぞれの手荷物の中に手分けしてしまいながら、俺はアイニーちゃんとハンター二人の紹介の間を持った。


 ちなみに、ハーピィの死体は放置だ。怪魔の肉は食べられない。国によっては無理矢理食べる地域もあるらしいんだけど、体に良くないって言われて、だいたい教法で禁止してる。悪魔の肉だしね。


「傷にはこの薬が効きますよ。手のひらに乗せて、体じゅうに塗ってみてください」


「あ、ありがとうございます……」


 ラティロの紳士の笑顔に、アイニーちゃんも少し笑っている。アイニーちゃん、騙されちゃだめだよ? そいつは変態だから。


「オレたちはまだ作業してッから、さっさと岩陰で塗ってきな」


「はい」


 マイフの言葉に従って、アイニーちゃんはとたとたと霧の奥に姿を消す。


 アイニーちゃん、マイフを初対面で怖がらないってすごいね。ちなみにそいつも変態だから。


「俺は塗るのを手伝ってこようかな♪」


「黙って羽根を束ねろスケコマシ。一本でも傷つけたら許さないからね」


 いやん。ラティロの睨みが怖いよ。


 アイニーちゃんが服を脱いでぬるぬると薬を塗っている姿を想像しながら、細い紐で羽根を纏めていく。


 あ、しばらくは、俺の上着が服代わりになるのか。アイニーちゃんのお胸やお尻に触れた上着。いいね♪ むしろ俺が上着になりたい。


 アイニーちゃんが戻ってきたら、ラティロはワンピースを簡易的な裁縫で補修した。服は脱がさないままで。あの艶かしいスリットは封じられてしまった、無念。というか、ラティロ。女子力高いな。


「……ありがとうございます……」


 仮止めの糸で縫われた服の上に、アイニーちゃんは俺の上着を羽織る。ラティロにぺこりとお辞儀をして、顔を上げない。


「ええっと……アイニーさんは、ツェフェリ町の方から来たのですね?」


「はい」


「今から町に向かうのは無理なので、今日はここで野宿をします。わたしたちも明日、ツェフェリ町に向かう予定でしたから、町まで一緒に行きましょう」


「……。はい」


 少し返事が遅れていたが、アイニーちゃんはこっくりと頷く。


 そして、俺とマイフの方にも振り返って、深々と頭を下げた。


「スロスさんもマイフさんも、本当にありがとうございました。一体何てお礼をしたらいいか……」


「じゃー、お礼にパンツの色教えて♪」


「……」


 急に周りの雰囲気が冷たくなった。


「……オイ。スロステメェ」


「いや、だってさ、もやもやするじゃん? あとちょっとで知り得そうなことを知れないと、気持ち悪いというか」


「気持ち悪いのはお前だ、変態野郎」


 ラティロが軽蔑の声を上げ、おどおどしながから顔を赤くしているアイニーちゃんに「今のに耳を貸す必要はありません」と入れ知恵する。


「このように、ここには怪魔より恐ろしい存在がいます。決してわたしの傍から離れないでください。何かあったら、わたしか、マイフに言うようにお願いします。スロスには絶対に近づかないように」


「ちょ、ラティロ!? 俺を仲間外れにするって酷くない?」


「ラティロが正しいだろォが。オメェは女狂いの変態だからなァ」


「お前らも生粋の変態じゃん!?」


「スロスよりマシだ」


 はあ。と、マイフが面倒事を嫌がるようなため息をついた。


スロスに自制などありません。

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