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流浪の遊び人 *王道少年漫画風・お下劣ファンタジー*  作者: 紅山 槙
episode1 女聖騎士は遊び人と一夜を共にする(全15話)
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ⅩⅠ 希望


 天神フェリス様。


 どうしてあいつがここにいるのですか?

 意識が壊れて、私は夢を見ているのでしょうか?


 スロスが私の体を抱きとめる。

 本能的にすがりつく。


「スロス……私を楽にしてくれないか」


「……あ、うん。今縄を解いて……」


「違う。その剣で私の心臓を抉ってくれ」


 殺してくれ。


 もう。もう、私は汚れきった。

 筋肉が断ち切られて、体が動かない。


 もう無理だ。逃げられない。悪魔からは逃げられない。


 これは幻術だ。飲まず食わずでいるせいか、水溜りが見えたこともある。それと同じ。救出が来た幻を見ている。


 フェリス様。フェリス様。フェリス様。


 どうか、どうか、私をお許しください。お救いください。


 この地獄から解放してください。


 ……助けて。


「メルーちゃん」


 あの男は私を起こして、私の腕をぐちゃぐちゃに縛る縄をナイフで切り落とす。


 力の入らない私の手をとって、スロスは治療院で患者を励ますかのように、温かく握った。


「またすぐ戻って来るから、とりあえずこれ持って待ってて」


「……?」


「五ヶ月分の(ツキ)をあげる」


 スロスはにまりと笑う。


「……うん。もうこれで大丈夫。メルゼルタは何も失わない」


 スロスは急ぐように立ち上がり、


「俺ちゃらんぽらんだけど、人の幸福は絶対約束できるからさ。だから、絶望なんかしちゃだめだよ♪」


 そして、早足に廃墟の奥に行ってしまった。


 ……五ヶ月分の(ツキ)

 今のは、本物のスロスか?


 いや、そんな馬鹿な。一人でここに?


 ここまで来るのに、道中の怪魔を単独で薙ぎ倒したのか?


 あいつらは力も体も強い、化け物だ。捕虜になるリスクを考えれば、一人で怪魔と戦うなどありえない。


 ……実は相当な実力者で、それを隠している可能性は?


 教会の最高騎士クラスだと、実力を読み取れないことがある。能ある鷹は爪を隠す。本当に強い者は、その正体をばらさない。


 ……はは。まさかな。


次回は主人公無双。

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