三十一日目
英文法の講義を受けていた時。
「はぁ」
隣にいるのは、高美。
私は、目で取って、教科書を差し出す。
『違う違う』
高美は、口パクして、手を振る。
ルーズリーフには、可愛いクマのマスコットキャラクターとマーカーで彩られた美麗な文が並んでいる。
私は、高美から、目を離すと、黒板を背にした山上先生と目が合った。
「海堂さん、次の文章読んで」
「はい。Nevertheless my mother will visit my flat next weekend, my room is untidy.That’s way I felt obliged to clean my room.」
私は例文を流麗な口調で読み上げた。
先生が黒板に文法を書く。
私はノートに書き留める。
「では、蜆塚さん」
山上先生は、風をあてる。
何人かあてた後、授業終了の鐘が鳴り、問答が終わった。
「何か悩み事?」
私は、高美がボールペンを片付けるのを見守り、尋ねる。
「それがね、バイトばっかりやってたら、お母さんに怒られちゃって」
高美は、バッグにファイルを仕舞う。バッグの中身が見え、綺麗に小さなバッグで整頓されている。
「何のバイトやってるの?」
「洋菓子の接客」
「そうなんだ」
「私、フランスで働くのが夢で」
高美は、目をキラキラさせながら、拳を握る。
「花の都パリだね」
フランスは、観光地第1位である。
高美は、フランス語を専攻している。
「働きながら、海外で暮らせるって、チラシがあって、将来そうやりたいなあって」
夢見がちな高美。私も、バッグにノートを仕舞う。
「でも、奨学金貰ってるから、今は勉強第一の方がいいよ」
私もバイトを入れてるので、人の事言えないが。
「今、フランス語会話と英会話行ってるから、勉強は別にいいかなって。そのお金稼いでるの」
私は感心した。確かに高美は、勉強がよくできる。昔、高校時代交換留学をしていたらしく、英語の発音も流暢だ。
「それで、将来の夢は?」
李理の声がした。
見ると、後ろに李理、麻子、風、実香、実紅がいた。
「チラシにあった仕事、多分飲食系だと思うんだよね。それで食えるようになったら、イラストレーターやって、現地の食レポの本とか出したいなぁ。皆の夢は?」
「私は外交官かな」と李理。
「公務員」と麻子
「通訳者」恥ずかしげに風。
「「決まってない」」実香、実紅がハモる。
「私は…」
大きく息を吸う。
「翻訳家」
「いいね」
高美は、わずかに笑った。
「じゃあ、次の授業行きますか」
麻子の号令で私と高美は、立ち上がった。




