ニ十日目
「いただきます!」
私が言うと同時にすきやきパーティーが始まった。
私は、卵の入ったお椀に肉を入れる。
はふはふ言いながら、食べる。
「おいしっ」
私と洋と菫、奈緒、百合子で美味しいを言い合う。
お母さんは、嬉しそうしている。
「今日は、お疲れ様。じゃんじゃん食べてね」
「お母さん、そんなに肉食べられないよ」
私が一言言っておく。
「そうね」
お母さんは、うふふと可愛く笑った。
「今日は、お招きいただき、ありがとうございます」
奈緒が頭を下げた。
「もう、皆そんなにお礼言わなくていいのよ。明日もテストなんだから」
おめかししたお母さんが手を縦に振る。
少し化粧をしたら、年齢を感じさせない。
手が細くて、綺麗だ。
洗い物はビニール軍手使うからかな。
そう思いながら、今日のテストの事を思い出す。
我ながら、よく出来た方だ、と思う。
もしかして、全部100点じゃないかな。
そうじゃないとしても、90点は、いってる。
今日のテストは、念を入れた英文法と、英文学、ライティング、オーラルコミニケーションだ。
よし。私頑張った。
私はガッツポーズをした。
「蓮華くん、テストはこれからだぜ」
洋は、ジャンを気取って言った。
「そうだね。今日よかったのが、嬉しくて」
私は涙が出て来た。
「おいおい、泣くなよ」
「奈緒まで、ジャンかい」
私は泣きながら、今までの事を思い出す。
始まりは、英語教室。6歳の時から、通わされたのが、きっかけ。その頃は、意味なんか分からないで、ただ楽しかった。小学校時代は、ジャンの冒険の英語版を繰り返し見ていた。引っ越しをした中学時代は、英語部に入った。だが、二年から分からなくなって、英語塾に通い始めた。ついていけないながらも、成績UPして、外国語科の高校に入学した。しかし、私は全然からきしだった。英検2級に挑戦して、なんとか受かる程度だった。ジャンの冒険が好きで、英語版のジャンの冒険の漫画を一冊だけ持っていて、何度も読んだ。それでも、大学受験が難しくて、センター利用でやっとABC大学に入れるレベルだった。何かの啓発本で、一日二十四時間あって、8時間睡眠時間に充てて、あとの時間を自由に使いなさい、とあった。これだ、と稲妻が走った。ジャンの冒険でしょ、英語でしょ、好きな小説でしょ、食べる事でしょ。英検1級受かって、翻訳家になりたい。そのためには、小説を書いて、文才つけたい。そうして、SNSの小説サイトに登録した。作家サークルに入ったら、皆もそのSNSに入っている事を知った。
「蓮華、大丈夫?今日は、勉強なしで食べましょう」
嗚咽が出て来た所で、お母さんが顔をうかがった。
「大丈夫」
心配そうな皆をよそに私はお椀を持った。
「食べよう」
「うん」
菫が言うと、皆がもう一度、食べ始めた。




