十九日目
「はじめまして。伊佐木菫と申します」
「うちの娘がお世話になってます」
二人は、挨拶を交わす。
昨日は、お母さんが来た。メールで、Cafe LuCkyの位置を教え、ルベルに連絡を取って、泊まらせる事に成功。そして、今は、民宿の方にいて、菫と合流した。
「昨日の料理、美味しかったわね。いつも食べてるの?」
お母さんが、顔を綻ばせた。
「そうでしょ。いつも食べてるよ」
私は自慢げに言った。お母さんに食べてもらえて、よかった。食べ放題プランは、私が奢った。初の奢りだ。民宿代は、お母さんが出したが。それでも、お金がないので、ルベルとまたアルバイトをする事を約束した。
「私も材料持ってきたから、負けないように作るわね」
お母さんが材料を見せた。スーパーの袋に入っているのは、卵、牛肉と葱とキノコ、豆腐、人参。
これは…。
「すきやき?」
「そう。すきやき、好きでしょう。菫ちゃん、3人で食べましょ」
「はい。ありがとうございます」
菫がお礼を言う。
本当は、奈緒と洋と百合子も呼びたいけど、今日は、来ていない。第一、私のアパートは、狭いので、窮屈だ。
「うん。材料は、持って帰るよ」
私は、お母さんから、スーパーの袋を貰う。何時間も、出しぱなしで腐ってないかな。
「冷蔵庫借りたから、腐ってないわよ」
私の心を読んだかのように、お母さんが言う。
いつの間に借りたんだ。
「試験頑張ってね」
帰り際、お母さんは、暗いから気をつけてね、と言った。
Cafe LuCkyを出て、菫と二人で家路に着く。
「お母さん、優しいね」
菫がおもむろに言う。
「うん。明日来てね」
私は笑顔で返す。
明日はすきやきパーティーだ。私は、レジ袋2つを持ち直す。
「1個持つ?」
菫が提案した。
「いいよ。私力持ちだから」
「大丈夫」
菫は、私に手を差し出す。
「ごめん。お願い」
私は菫にレジ袋1つ渡す。
この量じゃ、三人じゃ、食べきれないかもしれない。私の部屋は、狭いが、奈緒と洋と百合子も呼ぼう。
私はそう決意する。
レジ袋を渡した後は、無言で歩く二人。
「明日、試験だね」
「だね」
今日までたくさん頑張って来た。早く明日よ、来い。
そんな事を思っている内に家に着いた。
鍵を開けると、菫が扉を開けた。
菫は、一緒に私の部屋に入って、冷蔵庫の中に、すきやきの材料を入れる。
「じゃあ、私はこれで」
「ありがとう。明日必ず来てね」
菫は、礼をして去って行った。
その後、扉の鍵を閉め、私は時計を見た。
ちょうど、20時だった。
お風呂入ってもう寝よう。
テストの時に寝ないように、そうプランを立てた。