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十六日目

いよいよ試験まで、あと四日とせまった日、私はCafe LuCkyを飛び出した。

いつものように、Cafe LuCkyで学習しに来たのだが、家にノートを置いてきてしまったのに、気がついたからだ。

「よっと」

私は家に帰って、7冊の教科書が入った鞄を背負う。

ガチャと扉を開けると、奈緒が立っていた。

「奈緒。何でここに?」

奈緒は、表札を指差す。

「ついてきた」

そう言って、スタスタ行ってしまった。

早い。私は慌てて追いかける。

「どうしたの?」

私は奈緒に追いついて、尋ねる。

「驚くなよ」

奈緒が立ち止まる。

「菫に彼氏が出来た」

「嘘…」

私は思わず叫んだ。

「嘘だと思うんなら、本人に直接聞いてみな」

私達二人は、Cafe LuCkyに向かった。

扉を開ける私。

菫の姿を見つける。

「菫、彼氏が出来たって、本当?」

「本当」

菫がまっすぐ私を見て言った。

「えぇ!」

私は、大声を上げた。

菫に彼氏ができた。

美人とはいえ、料理にしか興味がなさそうだった菫に。

「そんなに驚かないでよ」

菫は、下を見て頬を染めた。

「いつ、いつそんな事になったの?」

私は、ガッついた。

「今日、誰もいない教室で、告白されたの。試験が終わったら、結婚を前提に付き合ってくれないかって」

小さな声で言う菫。

「で、OKしたんだ」

洋が確認する。

菫がコクンと頷く。

「どんな人、どんな人」

奈緒が洋の間を割って入る。

「爽やかで、かっこよくて、料理が好きで、私と同じでパティシエ目指してる人」

菫の頬がもっと赤くなる。

「そういえば、どうして専門学校じゃなくて、大学の栄養科に入ったの?その方がパティシエに近いじゃん」

私が以前から思っていたのと同じ疑問を百合子がぶつける。

「栄養のある洋菓子を作りたくて。りんごのハチミツ煮とかスムージーとか。彼もそうなの」

菫が顔を上げて、私を見る。

「どうかな?」

私は淋しくなった。彼氏なんて作らずに、女5人、同人誌を作ろうと思っていたのに。

「名前なんていうの?」

「花山一郎くんていうの」

菫は、頬を染めたまま、答えた。

花山一郎。それが、私達のライバルの名前か。

「紹介して欲しいなぁ」

私はぎこちなく笑う。

「いいよ。今日は、日曜日だから、明日なら」

菫は、楽しそうに笑った。

チッ。明日か。

私は心の中で舌打ちする。

花山一郎。一体何者なんだ。

「おめでとう」

のんきそうに言う百合子。

「ありがとう」

菫は、嬉しそうだ。

「さあ、勉強、勉強」

奈緒が言った。

私は、菫に見合う人物なのか、早く知りたくて、勉強に身が入らなかった。


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