十五日目
私は、Cafe LuCkyでジャンボイチゴパフェを食べていた。イチゴパフェは、カステラとチョコレートとフレークに、生クリームと苺が入っていた。
「美味しー」
ほっぺがとろけるような甘さだ。
「おすすめ料理ですから。コーヒーのおかわりは、いいですか?」ルベルさんが注文表を片手に尋ねる。
「お願いします」
このパフェの甘さとコーヒーの苦さは、絶妙に合う。
「コーヒーお持ちしました」
奥から出て来たルベルは、私の前にコーヒーを置く。
「すみません」
私は、カステラに取り掛かる。そして、コーヒーを飲む。
「美味っ」
そう言った時に扉が開いた。
「こんばんは」
「百合子。久しぶり。パフェ食べたら」
私はジャンボパフェを見せる。
「いらっしゃいませ」
ルベルが挨拶する。
「うん。私もジャンボパフェにしようかな。それとコーヒー」
百合子は、私の隣の席に座る。
「かしこまりました」
ルベルがパフェを作りに行く。
私は百合子に向き直る。
「今日は、水曜日だね。試験まで、5日」
「うん。あっという間だったよ。試験範囲全部終わるかな」
百合子が宙を見る。
「まだ終わってないの?」
「うん。ちょっと現代文に時間かけすぎたかも」
鞄から、教科書を出す百合子。
「英語終わってないんだ。これから、英語の本読む」
そう言えば、その授業は、同じクラスだった。百合子の目は、虚ろだ。
「私も手伝おうか?」
「いい、いい」百合子が手を振る。「いざとなったら、ヤマカンがあるから」
百合子は、教科書を開いた。
私も単語帳を開く。
「イチゴパフェお持ちしました」
ルベルがジャンボイチゴパフェとコーヒーを百合子の机の前に置いた。
「ありがとうございます」
パフェを食べ始める百合子。
「美味し。癒やされるわ」
百合子の目が輝いた。私は少し安心する。
「美味しい物、食べると癒やされるよね」
「本当。でも、最近お母さんが晩ごはん奮発してくれちゃって、太っちゃって」
「全然太ってないよ。勉強で消費されてるよ」
「そう?よかった」
百合子は、ふっと溜息をついた。
「高校生の時より、勉強してるのに、範囲が広くて。でも、現代文は、100点取れる自信ある」
Vサインをする百合子。
「そうそう。その意気」
二人でパフェにガッつく。コーヒー、パフェ、コーヒー、パフェ。
「あ~、食べた、食べた。ルベルさん、アボカドサラダお願いします」
私は食べ終わって、次のオーダーをする。
「あ、私も」
百合子も、パフェを飲みこんで、私と同じオーダーをした。
「ちょっと待ってくださいね」
厨房に入るルベル。
待ち時間に勉強する私達。
「終わりそう?」
「分からない。私、英語は、苦手だから」
英語本と格闘している百合子。
私も単語帳片手に心の中で応援する。
「お待たせしました」
アボカドサラダを机に置くルベル。
ペンを置いて、アボカドサラダを食べ始める二人。
「マヨネーズと合うね、アボカドは」
「うん」
アボカドを食べ終えて、いよいよ勉強に入ろうとした時に扉が開いた。
「洋、菫、奈緒」
私が声をあげる。
「皆来たね」
百合子がにやりと笑った。