十二日目
「昨日は、お世話になりました」
私がルベルに頭を下げる。
「いえ、たくさん友達を連れて来てくれてありがとうございます」とルベルが両手を振った。
昨日は、外国語学部の友達とCafe LuCkyで勉強したのだ。途中、作家仲間と合流したので、民宿の一室で勉強したのだが。
「楽しく勉強できました。かかっていた洋楽よかったですね」と称賛する。
「ええ、知り合いが歌手で」ルベルが嬉しそうだ。
「今度、紹介してください」と私がルベルに言った。
「前に会ってます。今日来ますよ」
「本当ですか?」
私は身を乗り出す。
「月美って言うんですけど、英語が上手くて、発音がいいんです。カップルの女性の方です」
とルベル。
「あの月美さん」
長髪の茶髪美人。
私は納得して言った。
カラン。
ベルが鳴る。
「月美、やってきたんですね」
ルベルが月美の元へ行く。
「来ました」
後ろから、睦月が現れた。
「また食べ放題プランお願いします。…あれ、君は」
私は睦月と視線がぶつかった。
「店員さんよね。今日は、お休み?」
月美が後を引き継いだ。
「こんにちは」私は挨拶する。「この間は、特別に働かせてもらいました。素敵な曲ですね」
「ありがとう」
月美は、喜悦したように笑む。笑顔が素敵だ。
私は見とれてしまった。
「どうしたの?」
月美は、私に問う。
「いえ、私、英語の勉強があるので、もう帰ります。ゆっくりして行ってください。ルベルさん、また明日」
私は鞄を持って、店を飛び出した。
はあ。びっくりした。美人は近くで見ると、もっと美人だな。私はちょっと嫉妬してしまう。
私は上空を見上げた。夜空には、星がいっぱいあった。
「あ、流れ星」
あんな美人さんになって、翻訳家として活躍できますように。
英語、頑張んないとな。
私は大きく息を吐いて、自分の住むアパートに向かったのだが。
「蓮華」
菫に見つかった。
「帰るなら、一緒に帰りましょう」
「うん」
私は鞄を持ち直して、菫と並んで、アパートに帰った。
「それで、あんな所で何してたの?」
歩きながら、菫が問う。
「流れ星あったから、願い事言ってた」
「流れ星ね。何かいい事あるといいわね」
菫は、クールに言うと、鞄から一枚の紙を取り出して、私に渡した。
「今度の同人誌のチラシ。奈緒がパソコンで作ってくれたの」
「同人って夏じゃなかったっけ?」
私はチラシを受け取って眺める。さすが、奈緒。いいチラシ作る。それは、ジャンとトムが描かれている。美術も得意なようだ。
「私達、サークルで、一回本出してるけど、夏コミっていうの初めてでしょう。だから、今から勉強も小説も頑張るんだって張り切ってるのよ」
菫は、あまり頑張りすぎるなとは伝えたけどね、と続けた。
「奈緒は、頑張り屋そうだもんね」
夢は、コンピュータープログラマーに作家。二足のわらじを履くつもりだ。
「寝てるの、って聞いたら、8時間睡眠してるって。10時間、勉強にあててるみたい」
菫は、アパートに着いて立ち止まった。
「じゃあ、私こっちだから」
「お疲れ様」
私と菫は、手を振った。
彼女が部屋に入るのを見届けると、私も自分の家の鍵を開けた。
中に入って、鍵を閉めると、電気を付けた。
部屋は、朝出て行ったままだ。
私は勉強机の前に正座すると、英語の教本を取り出した。
10時間か、私もやってやる。
私は時計をチラりと見て、気合を入れた。