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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
三章

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74話 四魔族ダンタリオンの眠る迷宮へ

 翌朝――


「さて、行くとするか」


 宿屋の前で、皆を見渡すユリウス皇子。

 それに応えるように、レムたちは頷く。


 いよいよ四魔族ダンタリオンの封印されている、この都市近郊の迷宮へと向かうのだ。


「皆さま、どうかエリス様をよろしくお願いいたします」


 エリスのお付きの教会の侍女たちが、深く頭を下げる。

 それに応えたところで、一行は馬車へと乗り込む。


 ◆


「アレが目的の迷宮か。聞いていた通りだな」


 馬車の中から遠くの方を見据えるユリウス皇子。

 その視線の先には広大な森林が広がっている。


「森林型の迷宮は状態異常攻撃を仕掛けてくる厄介なモンスターが出現する可能性が高い……そう言っていたな、レム?」


「はい、ユリウス。なので事前に、状態異常を解除することができるマジックアイテムをある程度揃えておきました」


「うむ、助かるぞ」


 あらかじめ迷宮の情報を得ることで、レムは今回の迷宮攻略用のアイテムを仕入れていた。

 毒や麻痺、睡眠効果を打ち消すマジックポーションの数々だ。


(レム……相変わらず、こういう時のあなたの表情は頼もしいですね……)


 一緒に馬車に乗っていたエリスは密かにレムの戦士としての表情に見惚れている……のだが、レムがそれに気づくことはない。


 そうこうするうちに、馬車は迷宮の入り口へと到着する。


「いよいよね、まだ本来の半分も戻ってないけど、レムがいれば大丈夫だと信じているわ」


 迷宮の入り口を見据えながら、レムへと話しかけるマイカ。


 四魔族ウァラクとの戦いで封印されてしまった彼女のスキルは、この数日間でいくつか封印が解除された。

 それでもまだまだ使用できるスキルは少なく、心許ない。

 しかし、それであっても、彼女はレムがいれば大丈夫だと確信しているのだ。


「むぅ……」


 レムに対するマイカの信頼の厚さに、ユリウス皇子が少しだけ複雑そうな表情を浮かべるが、それも一瞬のことであった。


「アリシア、ヤエさん、それにシスター、絶対に無理をしないで」


 三人に視線を向けながら、注意を促すレム。

 特にアリシアとアンリは戦闘力が低いので要注意だ。


「了解です、ご主人様♡」


「大丈夫だ、レムちゃん。お姉ちゃんに任せておけ!」


「私もできる範囲でレムくんの支援をするわ!」


 アリシア、ヤエ、アンリは、それぞれレムに応えてみせる。


「迷宮に入る前に、皆さんに神聖属性のスキルをかけさせてもらいます」


 そう言って、エリスが錫杖を天に掲げ――


「この者たちに祝福を……《ベルゼギフト》!」


 ――高らかにその名を叫ぶ。


 するとレムたちの体が白銀色の神々しい光に包まれたではないか。


「これは……すごいな、体のあらゆる能力が向上していくのを感じるぞ……!」


 空色の瞳を見開き、声を漏らすユリウス皇子。


 神聖属性スキル《ベルゼギフト》――

 聖魔王ベルゼビュートに祈りを捧げる巫女エリスのみが持つ、固有スキルのひとつだ。

 その効果は身体能力・スキルの威力・回復力など、あらゆる能力を向上させる、というものだ。


「では、ぼくも……《眷属召喚》!」


 レムが霊装騎士としてのスキルを発動。

 紫色の魔法陣の中から、スケルトン三体とスケルトンガードナーが現れる。


「今度はわたしですね♪ 《ランクアップマジック》!」


 いつも通り、アリシアがアンデッドたちに力を授ける。

 スケルトンはハイスケルトンに、スケルトンガードナーはハイスケルトンガードナーへと進化を遂げる。


「シスター仕上げを」


「了解よ、レムくん。 来なさい、《装剣蟲》!」


 レムの指示でフェイズシフトスキル、《戦蟲召喚》を発動するアンリ。

 ハイスケルトンたちの腕に、《装剣蟲》が装備される。


「ハイスケルトンガードナー、それにハイスケルトンたち、いつも通りの連携で頼む」


『かしこまりました、マスター♪』


『『『了解!』』』


 レムの言葉に、しっかりと応えるアンデッドたち。


 目の前の光景を見て、エリスが驚いたように目を見開いている。


 以前のレムはほぼ下級のアンデッドしか使役できなかったと記憶していた。

 しかし、今彼の言葉に応えるアンデッドたちにはしっかりとした知性と、その佇まいからなかなかの戦闘力を感じるからだ。


「では、四魔族ダンタリオンの元へと向かいましょう」


 レムの掛け声で、一行は森林型の迷宮の中へと足を踏み入れる。

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