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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
三章

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70話 向き合う時

 数日後――


「最後の四魔族の復活……ですか」

「ああ、まさかこんなに早いとは思わなかったがな……」


 侯爵家――その応接の間で、ユリウス皇子とレムがやり取りを交わす。


 巫女エリスが聖魔王より賜った予言……その情報が使者によってユリウス、そしてマイカにもたらされた。


 レムに協力を求めるべく、ユリウスはマイカと一緒に侯爵家へと訪れたのだ。


「最後の四魔族の名はダンタリオン……。魔王マモンの配下の中で、最も強力な四魔族だったと、過去の記録に残っているわ」

「復活の場所はこの帝国内にある伯爵領――グラッドストーン近郊にある森林型の迷宮だと予言されている」


 マイカとユリウス皇子が、説明を続ける。

 それを真剣な面持ちで聞くレム。


「伯爵領……この都市から馬車で数日の距離、だったはずですよね?」

「その通りだ、レム。一刻も早く迷宮へと向かいたい。今日中に出発することはできるか?」

「もちろんです、ユリウス殿下。すぐに準備を始めます。……アリシアとシスターは……どうせついてきちゃうよね?」


 ユリウスの言葉に即答しつつ、レムはアリシアとアンリの方をチラリと見る。


「もちろんです、ご主人様♪」

「レムくんのいるところが、私の居場所だもの!」


 レムの質問に、アリシアとアンリもまた即答だ。


 そんな中、マイカが再び説明を始める――


「今回の戦いには、王都からエリス様も加わることになっているわ」


 ――と……。


「エ、エリス様が……!? それは本当なの、マイカ?」

「本当よ、レム。魔王マモンに仕える四魔族の最後の一柱……これを仕留める、それができなくても、エリス様の聖なる力を使えば〝封印〟もできるわ」


 聖魔王ベルゼビュートの巫女であるエリスは、特別な力を有している。

 それを使えば、たとえ敵を倒すことはできなくとも、相手が弱ってさえいればその地に封印することができるかもしれないのだ。


「それと、この都市からは私も参戦することが決まった」

「ヤエさんも、ですか……」


 同じ部屋にいたヤエの言葉に、レムの顔が渋いものになる。


 前回……四魔族レヴィとの戦いで、ヤエはレムを庇って瀕死の重傷を負った。

 そんな彼女だからこそ、そしてアリシアと同じように愛している彼女だからこそ、再び危険な戦いに加わることがレムには不安なのだ。


「心配するな、レムちゃん。ヤエお姉ちゃんに任せておけ!」


 レムの心境を悟ったのか、ヤエは元気な声でそう言うと、レムの頭を撫でてやるのだった。


「わかりました。ヤエさんに何があっても、ぼくが必ず守ってみせます」


 皆の前で頭を撫でられることを恥ずかしく思うも、レムは少し男らしいことを言ってみせるのだった。


 そんなレムを見て、マイカとアンリは複雑な表情を浮かべる。


 アリシアだけでなく、ヤエにまで先を越されてしまった……。


 それが悔しいのだ。


 ……まぁ、アンリに関しては若干頬を赤く染め、太ももをモジモジと擦り合わせているのだが……難儀な体質である。


 されはさておき。


 一応タダで働かせるわけにはいかないということで、ユリウス皇子から報酬の話などをされ、それを承諾したところで、レムたちは出発の準備を始めるのだった。


 ◆


「悪いな、レム。本当はアリシアたちと乗りたかっただろ?」

「いえ、むしろこの方が助かります、ユリウス。あのままだと喧嘩が起きそうだったので……」


 馬車の中、ユリウス皇子とレムが会話を交わす。

 約束どおり、二人きりの時はユリウス皇子のことは呼び捨てだ。


 馬車は三台用意された。


 レムと一緒に乗ろうと、女性陣の間で視線が火花を散らしたのは言うまでもない。


 レムが困った表情を浮かべたのを見て、ユリウス皇子が一緒に乗ろうと提案したのだ。

 女性陣の誰と乗っても恨まれるところだったが……ユリウス皇子の気遣いに、レムは感謝である。


 ◆


「むぅ……ご主人様と一緒に馬車に乗りたかったです……」

「まぁ、殿下にああ言われてしまっては仕方ないだろう。それよりもアリシア、次はどうやってレムちゃんをベッドの上で可愛がってあげるか……その作戦会議をしようじゃないか」

「……っ! それは素晴らしい提案です。ヤエさん、ふふふ……ご主人様の蕩けたお顔を見るためならなんだってしちゃいます♡」


 二台目の馬車の中では、アリシアとヤエはとんでもない作戦会議を始めるのだった……。


 ◆


(ど、どうしよう……)

(き、気まずいわね……)


 三台目の馬車の中――


 そこは気まずい空気と沈黙が支配していた。


 アンリとマイカ……。


 前者はレムのことを裏切り、彼を絶望に叩き落とした張本人。

 後者はレムをパーティから追放し、これまた彼を絶望に叩き落とした張本人である。


 互いに後ろめたい気持ちがある。

 それと同時に、レムを傷つけたことに怒りを覚えてもいる。

 そして何より、レムを想っているも、上手くいかないもの同士……。


 劣等感、怒り、シンパシー……色々な感情が混ざり合い、どんな会話をしていいものかわからないのだ。


 だがそんな中――


「アンリ、腹を割って話さない?」


 ――マイカが口を開いた。


「マ、マイカ様……どういうこと、でしょうか?」

「私達はレムを裏切り、傷つけた。そしてお互いのことをよく思っていない。だからこそ、お互いが思っていることを共有して、罪を再認識するの。そうしないと、本当の意味でレムと向き合うことなんてできないわ」

「そう……ですね。わかりました、私のしてしまったこと……全てお話しします。マイカ様に対して思っていることも……」


 マイカの提案に、アンリは応じることにする。

 お互い、そんなやり取りをすれば心が傷つくことは明らかだ。


 だが、前に進むために……。

 愛する少年に本気で向き合うために……。


 二人はおもむろに言葉を交わし始めるのだった。


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