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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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65話 吸血鬼ノ討滅戦杭

(くそっ、やられた……!)


 レムは歯軋りする。


 まさかモンスターに偽の情報を摑まされるとは――

 マイカとユリウス皇子を行かせたのはワザとだったとは――


 普段のレムであれば騙されることはなかったかもしれない。

 しかし、四魔族の完全復活を前に、彼だけではなく皆焦っていた。


 そして、ナーガごときがこのような手口を使ってくると思ってもみなかった。

 伊達に四魔族によって生み出された個体ではなかったということだ。


「だったらお前たちをさっさと倒すのみだ!」


 その場からレムが弾丸のように飛び出した。

 アリシアの《ランクアップ・マジック》によって強化された《霊剛鬼剣》を振るい、ナーガへと襲いかかる。


『疾イ! ならばこれでどうダ、《フレイムテール》!』


 レムの速さに驚愕するナーガ。

 だが、敵も四魔族によって生み出されしモンスターだ。

 すぐさま対応すべく、スキルを放つ。


 ナーガが放ったのは炎属性の中級スキル《フレイムテール》――

 自身の尻尾に炎を纏わせて放つ強力な一撃だ。


 まともに喰らってたまるか。


 レムはその場で大きく踏み込むと大きくサイドステップし、敵の攻撃を見事に躱す。

 そして自分の横を通り過ぎた尻尾の動きに合わせ、斬撃を放った。


『キシャァァァァァァァァァ――ッ!?』


 轟くナーガの悲鳴。

 それと同時に、尻尾から緑の鮮血が噴き出した。

 レムの《霊剛鬼剣》によって、深い切り傷を負ったのだ。


「く……ッ、やはり重いッ――だが、《アイギス》であれば!」


 少し離れたところでは、ヤエがオーガの棍棒を《アイギス》で受け止めていた。

 ゴブリンキングを相手にした時は反応するのもやっとだった彼女だが、新たに目覚めた力――《アイギス》によって身体能力をましているので、十分に対応できている。


 盾の防御力自体も格段にアップしているようだ。

 オーガの棍棒をまともに受けても、傷ひとつついていない。


「ちっ、早く隊長たちに加勢しなきゃならねーってのに!」


 さらに離れたところではジェーシーたちもミノタウロスと交戦中だ。

 やはり四魔族によって生み出されただけあって、通常の個体よりも強いようだ。

 皆、少々苦戦を強いられている。


「いきなさい、《ファイアーボール》!」

「今傷を治します、《ヒール》!」


 アリシアが魔法スキルで皆を援護する。

 傷を負った騎士に、アンリが回復魔法を施し回復していく。


 ハイスケルトンガードナーたちは、万一アリシアたちに敵が襲いかかることがあって守れるように、側で警戒をしている。

 剣と剣がぶつかり合い、魔法が火花を散らし氷のカケラを撒き散らす――



「なんだ……あの姿は?」


 ユリウス皇子が目を見開く。


 その先にはレヴィが口を歪めて佇んでいる。

 しかし、その姿は先ほどとは大きく変わっている。


 背中から二本の、爬虫類を思わせる赤銅の巨大な腕が生えている。

 そして、彼女のもともと持っていた右腕は、まるで〝ドラゴンの頭〟としか表現しようがない形状へと変化し、左腕は禍々しい紫色に染まっていた。


「あの力……まさか魔王の体の一部を――?」

『クヒャヒャヒャヒャ! よくぞお気付きです、女勇者! この姿は、七大魔王マモン様の加護を受けたものでございます!』


 マイカの呟いた言葉に、レヴィが甲高い声で笑う。

 言葉を聞くに、魔王の力の一部を使うことができるということらしい。


「《黒ノ魔槍(ブラック・ジャベリン)》ッ!」


 敵が動く前に一撃で決めなければ!

 マイカはそう判断し、闇魔法スキル《黒ノ魔槍》を放った。

 漆黒の閃光が迸り、レヴィの土手っ腹に襲いかかる……が――


『無駄でございますッ!』


 マイカが動くと同時、レヴィは紫に染まった右腕を正面にかざした。

 するとどうだろうか、マイカの放った《黒ノ魔槍》が消滅してしまったではないか。


(まさか、こいつもスキルを封印するんじゃ!? ――いえ、そういうわけじゃなさそうね)


 魔法スキルを無効化されたことで、マイカは咄嗟にウァラクの力を思い出すが、体に異変が起きないことを考えるに、そういう訳ではなさそうだ。


「ならばこれでどうだ! 唸れ、《カリバーン》!」


 ユリウス皇子が飛び出した。

 彼が叫んだ瞬間、手にしたグレートソードが眩い白銀の光に包まれた。


 神聖属性スキル《カリバーン》――

 武器に神聖属性の力を付与できるスキルだ。


『クヒャヒャァァァ! それも無駄でございます!』


 再び左手を前へと突き出すレヴィ。

 なんてことだろうか、ユリウス皇子のスキルも無効化されたようだ。

 グレートソードは輝きを失ってしまう。


「くっ!? だが、攻撃できないわけではない!」


 驚愕に目を剥くユリウス皇子、だが怯まない。

 そのままグレートソードを振り抜き、レヴィを真っ二つに叩き割ろうと攻撃を続行する。


『おっと、まさかそのまま攻撃を続けるとは――少しビックリでございます』

「なん……だと……!?」


 再び驚愕するユリウス皇子。

 対し、レヴィはイヤラシイ笑みを浮かべている。


 ユリウス皇子のグレートソードは、レヴィの背中から生えた巨大な腕によって白刃取りされてしまっていたのだ。


 次の瞬間、ユリウス皇子の体に言いようのない嫌な感覚が走り抜けた。

 思わずグレートソード手放し、その場から飛び退いた。


 そして、それは正解だった。

 レヴィがドラゴンの頭の形に変化した右腕を前へ突き出すと、その顎門の中から紫色の業火が飛び出したのだ。


「くっ!? あれだけの防御力を持ちながらなんて攻撃力だ!」


 既のところ炎を回避したユリウス皇子が悪態を吐く。

 見れば彼の纏った鎧の肩部分が僅かに焦げている。


「《黒ノ魔弾(ブラック・バレット)》!」

「《セイクリッド・ランス》!」


 マイカは限られたスキルのうちの一つ、《黒ノ魔弾》を放つ。

 先ほど放った《黒ノ魔槍》よりも攻撃力は落ちるが、それでも当たれば敵の生命力を少なからず奪うことができるし、何よりも牽制になる。


 それに合わせ、ユリウス皇子も神聖属性スキル《セイクリッド・ランス》を放った。

 漆黒の魔弾と白銀の聖槍がまっすぐにレヴィへと飛んでいくが――


『クヒャヒャヒャヒャヒャ〜ッッ! 何度やっても同じでございます! 今代の勇者はなんて弱いのでしょうかッ!』


 ――高笑いしながら、またもや左腕を突き出し、スキルを無効化してしまった。


「ちっ、近接スキルも魔法スキルも効かないとは……!」

「いったいどうすれば……」


 ユリウス皇子、それにマイカも思わず言葉を漏らす。

 いくつものスキル、それも神聖属性と最強の闇属性を無効化されてしまっては……。


 そんな二人を見下した目で見ながら、レヴィが今度はこっちの番だとばかりに、攻撃を開始する。



「はぁっはぁっ――」

「ぐっ……」


 マイカが肩で息をし、ユリウス皇子が苦しげな表情でグレートソードにもたれかかる。

 戦闘を繰り広げること数分――


 マイカはスキルの殆どを使い果たし、ユリウス皇子もグレートソードを取り戻したはいいが、体力の限界に達してした。


 見れば二人とも体にいくつもの傷や火傷を負っている。

 それだけレヴィの攻撃は苛烈だったのだ。


 対し、そのレヴィはというと、体に小さな傷は負っているものの、それ以外は大した傷も負っていない。


 いくつかの攻撃を当てることには成功した。

 しかし、それは全てスキルを使わずに放った素の攻撃だった。

 それ故に決定打にならなかったのだ。


『ククククク……まだワタクシの攻撃は終わりではありませんよ!?』


 マイカに向けて、レヴィが再び右腕から業火を放った。


(か、回避が……ッ!)


 防御スキルを使い果たしたマイカは回避するしかない。だが……それは叶わなかった。

 近接戦中心の慣れない戦い方をしたばかりに、体力を大幅に消耗し思うように足が動かない。


「マイカ――ッ!」


 仲間を――マイカを失ってなるものか!


 ユリウスは思わずマイカの前に飛び出し、彼女を庇った。

 そして紫の業火に飲み込まれ――――る直前、炎は真っ二つに割れ二人の後ろへと通り過ぎていった。


「二人とも、待たせてすまない」

「いや、最高のタイミングだ!」

「レム……!」


 二人の前に、《霊剛鬼剣》を構えたレムが現れた。

 仲間を傷つけられた怒りに燃える眼差しで、レヴィを鋭く睨みつける。


『――ワタクシの攻撃を剣で割るとは……なかなかやりますねぇ』


 レヴィが無表情で言う。

 冷静を装っているが、頬に青筋が浮いてる。

 あと少しで勇者二人を倒せたところに邪魔が入ったのが頭にきているのだろう。


「レム、向こうは大丈夫なのか……?」

「大丈夫です、ユリウス殿下。ナーガは倒して、あとは瀕死のオーガとミノタウロスのみです。あとはみんなに任せて、ぼくだけこちらに来ました。それよりも、時間を稼ぎますので二人は回復を」


 ユリウス皇子に答えるとレムはそう言い残して、ダッ! と飛び出す。


『ぐッ!?』


 レヴィが後ろから生えた腕で《霊剛鬼剣》よる斬撃をガードする。


 さすが魔王の加護を受けているというだけはある。

 レムの《霊剛鬼剣》を以ってしても、浅い傷を負わせることしかできない。


「助かったぞ、レム。――マイカ、今のうちにハイポーションを」

「了解です、殿下」


 レムが隙を作ってくれた隙を使い、二人は傷と体力をハイポーションにより完全回復させる。


「どういうことだ? なぜレヴィはレムの攻撃を無効化しない?」

「本当ですね、殿下。――まさか……!」

「何か気づいたのか、マイカ?」

「殿下、レムの使う《斬空骨剣》は武器を呼ぶ召喚スキルです。もしかしたら、レヴィは攻撃スキルしか無効化できないのかもしれません!」

「なるほど……だから、俺たちのスキルによる攻撃だけ無効化されたってわけか……よし、ならば純粋な剣技でレムと連携するぞ。マイカ、お前は隙をみて残りのスキルで援護してくれ!」

「了解しました、殿下!」


 体力を回復させたユリウスが再び戦線に復帰する。

 背中から生やした巨腕と、ドラゴンの顎門から放つ業火でレムを追い詰めるレヴィの背中から斬りかかる。


『くっ!?』


 その場から大きく横へと跳躍するレヴィ。

 やはりマイカの読みは正しかったようだ。

 レヴィは左腕の力を使ってこない。


 レムが斬撃を放つ。

 レヴィがそれを防ごうとするが、反対側からユリウス皇子がさらにグレートソードを振るう。


 ここに来て、初めてレヴィが押され始めた。


 スキルに制限がつけられ、本来の戦い方ができないマイカと、力に目覚めたばかりのユリウス皇子での連携は難しかった。

 しかし、純粋な剣技のみで戦うことを念頭に置けば、そして近接戦を主とするレムのサポートがあれば、特殊能力に頼り切った戦い方をするレヴィにも対抗することができる。


『くっ! 小賢しいでございます!』


 レムが敵の攻撃を躱し、そこへすかさずユリウス皇子がグレートソードをレヴィに叩き込もうとした時だった。

 レヴィは怪我をするのを覚悟で彼のグレートソードの刃を握り、攻撃を止めた。


(またあの攻撃か!)


 今度は完全に回避するために、ユリウス皇子はすぐさま大きく横に跳ぶ。

 そんな彼の横をレヴィの右腕が放った業火が走り抜けていく。


「殿下!」


 ユリウス皇子へ、レムが《霊剛鬼剣》を投げつける。

 パシッ! とキャッチするユリウス皇子が「これは……! とてつもないパワーが漲ってくるぞ!」と言葉を漏らす。


 レムの召喚する《霊剛鬼剣》は召喚中であれば他者に持たせることも可能だ。

 そして短時間であればその効果を付与することも――


 先ほど以上にパワフルに攻撃を仕掛けるユリウス皇子。

 さすがに、アリシアの《ランクアップ・マジック》の効果はレムにしか適用されないため、効果は落ちるが、それでも彼のもともと持つ膂力を合わせればとてつもなく強力な斬撃を放つことができる。


「《斬空骨剣》!」

「《黒ノ魔弾》!」


 レムが《斬空骨剣》を呼び出し真空の刃を放つ。

 それに合わせ、隙を狙っていたマイカも魔弾を放つ。


 ユリウス皇子の攻撃を防ぐのに精一杯だったレヴィに、それらを躱すことは叶わなかった。

 彼女の背中に、二つの攻撃が直撃する。


『グァァァァァァァァァァァ――――ッッ!?』


 悲鳴とともに、レヴィの背中から鮮血が飛び出した。

 傷は深い。その上、マイカの魔弾によって生命力そのものを僅かに奪われる。


『グゥゥゥゥゥ! お前さえ現れなければ!』


 言葉遣いなど忘れ、レヴィがレムを睨みつける。

 その次の瞬間だった――


『《オーバードライブ》…………ッ』


 レヴィが静かに、しかしハッキリと言葉を紡いだ。

 それと同時に、彼女の姿が掻き消え――レムの目の前に現れた。


 しかし、よく見ればレヴィの瞳や体の至るところから血が噴き出している。

 恐らく体へのダメージと引き換えに瞬間移動にも等しい高速移動を可能とさせるスキルだろうか。

 このままでは負けると悟り、奥の手を使ってきたのだ。


 今のレムには《霊剛鬼剣》がない。

 即ち運動能力は通常時のままだ。

 レヴィの攻撃に反応することができない。


「レムちゃん!」


 そんな時、その場に割って入る声が一つ――

 ヤエだ……。ヤエが《アイギス》を構えてレムとレヴィの間に割り込んでくる。


「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――……ッ!」


 ヤエの悲鳴が響く。

 見れば彼女の横腹を、レヴィの巨腕が貫いていた。


 激しく血を撒き散らしながらその場に崩れ落ちるヤエ。

 前の層の敵を片付け、この階層へと足を踏み入れた彼女は、レムの危機を前に《アイギス》によってもたらされる身体能力を駆使してレムをレヴィの攻撃から守ったのだ。


「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 レヴィに向かって激昂するレム。

 そんなレムに、イヤラシイ笑みを浮かべながら巨腕による攻撃を放つレヴィ。


 彼女は見切っているのだ。

 今のレムは《霊剛鬼剣》をユリウス皇子に渡したことで大幅にパワーダウンしているということを。


『なん……ですと……ッッ?』


 レヴィが信じられないといった表情で声を漏らす。

 自分の剛腕が、レムの細い左腕によっていとも簡単に防がれたからだ。


 レムの左腕のガントレットは、ガルガンから受け取ったヴィブラウム合金製だ。

 衝撃を吸収し無効化する効果を持っている。


「来い! 《霊剛鬼剣》!」


 驚愕し動きを止めたレヴィの隙を突き、レムは再び《霊剛鬼剣》を呼ぶ。

 ユリウス皇子の手から消えると、レムの手の中に現れ――レヴィに斬撃を放つ。


『グゥゥゥゥゥ!?』


 咄嗟に背中の腕で防御し、飛び退くレヴィ。


 絶対に殺すッ!


 激しい殺意をもって、今度は《斬空骨剣》を振り抜く。

 これもなんとかレヴィは防ぐが、レムの攻撃はこれで終わりではない。


「来い! 《吸血鬼ノ討滅戦杭ブラッディパイルバンカー》!」


 その場からレヴィに急接近しながら、新たな霊装武具を召喚する。

 レムの腕に、毒々しい真紅に染まった棺を思わせる形状のパイルバンカーが現れた。


「ぐっ! アリシア! シスター!」

「了解です、ご主人様! 《アイシクルランス》!」

「任せて、レムくん! 《甲弾蟲》!」


 霊装武具の連続召喚による負担で、レムの動きが一瞬だけ硬直する。


 しかし、レムは怒りに支配されつつも状況判断を怠らなかった。

 この階層に、アリシアとアンリが入ってきていたのを把握していたのだ。


 氷の魔槍と弾丸と化した蟲による攻撃に曝されるレヴィ、その間にレムの硬直は解除された。


 召喚した霊装武具をレヴィに向けて――


「死ねぇぇぇぇぇぇ――――ッッ!」


 ――あらん限りの怒りを叫ぶ。


 装填された戦杭が真紅の閃光へと姿を変える。

 閃光が迸り、今まさにアリシアたちの攻撃を防御するレヴィの土手っ腹を――――ズドンッッッッ! と貫いた。


『ゴフッ……この、ワタクシが……こんな勇者でもない、ガキごときに……』


 レヴィは血を吐き出すと、その場に落ちてゆく。


 戦杭射出兵器型礼装武具……《吸血鬼ノ討滅戦杭》――


 隙は大きいが、ここぞという時の決め手になるレムの奥の手だ。

 レヴィが完全に沈黙したのを確認し、ヤエの元へと駆ける。


「ヤエさん、すぐにハイポーションを……くそ、飲み込めないか。なら――」


 レムがハイポーションを口に含む、そしてヤエと唇をしっかりと合わせると、彼女の口の中に注いでいく。


 よかった……。どうやら間に合ったようだ。

 見る見るうちに傷が塞がっていく。


「ふふ……私のファーストキス……。レムちゃんに捧げてしまったな……」

「ヤエさん、どうしてあんな真似を……」

「言ったじゃないか、今度は私がレムちゃんを守ってみせるって……」


 レムの腕の中で、意識を取り戻したヤエが冗談めかして言う。

 そんな彼女にレムが悲痛な面持ちで問うと――そんな答えが返ってくるのだった。


 そんなタイミングで、残りの騎士たちもこの階層へとやって来る。

 ヤエに危険だから待機していろと命令されていたが、心配になり来てしまったそうだ。


「レム、まさか勇者でもないお前が四魔族を倒してしまうとはな……感謝しかない!」

「ありがとう、レム。本当に強くなったのね、あなた……」


 心から礼を言うユリウス皇子とマイカ、二人の勇者の感謝の言葉に、レムは恥ずかしそう微笑んで応える。


「もうっ! ご主人様ったら、また無茶をするんですから!」

「そうよ、心臓が止まるかと思ったわ!」


 レヴィに捨て身の猛攻を仕掛けたレムを、アリシアとアンリが叱りつける。

 それだけ彼のことが心配だったのだ。


 しかし、二人の声も今のレムには馬の耳に念仏だ。


 レムの瞳は、命を懸けて彼を守ってくれたヤエに向けられていたのだから――

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