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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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64話 四魔族レヴィ

「レム、起きてる……?」

「マ、マイカ……どうしたの? 寝ないと戦いに響くよ?」


 食事を終え、仮眠を取ろうと皆が寝静まった頃、マイカがこっそりとレムに声をかけてくる。

 その際に、横になったレムに寄り添うような態勢をとってきたので、レムは少々動揺してしまう。


「どうしても伝えたいことがあって……レム、私の下らないプライドのせいで、あなたをパーティから追放したこと、その結果、辛い思いをさせてしまったこと……本当にごめんなさい……」

「マ、マイカ……?」


 レムはさらに動揺する。

 まさか、あのプライドの高いマイカから面と向かって真摯な謝罪をされるとは思ってもなかった。


 そんなレムを潤んだ瞳で見つめながら、マイカは言葉を続ける。


「私、レムのことが本当に好きだったの……。でもあの時、あなたの心はアンリのものになってたし、それに私のプライドも邪魔して素直に好きだって伝えられなくて……だからあなたを追い詰めて、無理やり自分のものにしちゃえって……」


 徐々に頬を赤らめながら、レムに想いを紡ぐマイカ。


 よく見れば体が震えている。

 それだけ、自分の想いを伝えるのが恥ずかしく、そして怖いのだろう。


(アリシア……いったいマイカに何を言ったんだ……)


 マイカの言っていることが事実だということは、彼女の表情を見ればレムにはわかる。

 ただ、ここまで素直に自分の心境や謝罪の言葉を口にするなど、以前の彼女からは考えられなかった。


 先ほど、アリシアとマイカはずいぶんと長い時間コソコソとやっていた。

 恐らく、マイカの態度の変化はそれが原因に違いないと、レムは憶測を立てる。


「レム、ごめんなさい。許して――はくれないかもしれないけど、私はあなたのことがずっと好きだから……」

「マイカ……」


 再度の告白とともに、レムの服の裾をギュッと震える手で握るマイカ……。

 レムはまだまだ幼い。いきなり謝られても気持ちの整理がつかず、彼女の名を呼ぶことしかできない。


「答えはいらないわ。ただ、謝罪の言葉と私の気持ちを伝えたかったの……本当にごめんなさい。そして、あなたが誰と結ばれようと、私はずっとレムのことが好き……」


 最後に、改めてマイカは自分の想いを伝えると、レムの頬に、ちゅっ……と唇を触れさせた。


「…………ッ!?」


 レムは目を見開き、息を漏らす。


 そんなレムをマイカは上目遣いで見つめると、顔を真っ赤にして元の位置に戻って行くのだった。



「よし、それじゃあ行くとするか……」


 2時間後――


皆が仮眠をとり、身支度を終えたところで、ユリウス皇子が指示を出す。

その際に、少々思い悩んだ様子のレムと、急に生き生きとしはじめたマイカを見て、複雑な表情を一瞬だけ浮かべる。


「アリシア、ありがとう。素直に想いを伝えたら気持ちが楽になったわ……」

「ふふっ、それはよかったですね、マイカ様……♡」


 こっそりとマイカとアリシアが、小声でそんなやりとりを交わしていた。

 声は聞こえなかったが、二人の親密な様子に、レムは溜め息を吐くのだった。


 だが、考えても仕方がない。

 今は四魔族のもとまでユリウス皇子とマイカを無事にたどり着かせることが先決だ。

 例のごとく、レムはハイスケルトンラットを召喚すると、索敵に向かわせる。


 そうして迎えた迷宮十四層目――


「これは……〝ナーガ〟にオーガ、それにミノタウロスが四体……」


 ハイスケルトンラットが、レムの瞳に新たな敵を映し出す。

 奥に控えていたのは、先の攻略でレムとヤエが倒したことのあるオーガとミノタロス四体、それに蛇人型のAランクモンスター、ナーガだった。


 位置的に岩陰などから奇襲をかけることはできなさそうだ。

 それに様子を見るに、敵はこちらの気配に気づいているらしい。

 仕方がないと割り切り、レムを先頭に道を進む。


『キシャァァァァ……そこまでだ、人間どもヨ!』


 レムたちの姿を確認したところで、下半身で塒を巻いたナーガが言葉を発する。

 それに合わせ、オーガが無言で金棒を構え、ミノタウロスもそれぞれ剣と杖を構える。


『四魔族が一人、〝レヴィ〟様が完全に復活されるまで、ここから先には行かせんゾ!』

「ほう……四魔族のことを知っているということは、貴様たち、そのレヴィとやらに召喚されたモンスターだな?」

『キシャシャシャシャシャ! その通りだ、人間ヨ。――ム? その神聖属性の波動……勇者か?』


 どうやらこの迷宮で復活する四魔族の名はレヴィというらしい。

 そして、ユリウス皇子の言う通り、目の前のナーガとオーガはレヴィによって召喚されたようだ。

 恐らく、完全なる復活をするまでの足止めに、六体を召喚したというところだろうか。


「レム、ヤエ隊長、ここは任せるぞ!」

「了解です、殿下」

「お任せください!」


 ユリウス皇子が言葉とともに駆け出す。

 マイカもそれに続く。


 四魔族、レヴィはまだ完全な復活を遂げていないようだ。

 であれば、今のうちに勇者二人でカタを付けてしまおうということだ。


『行かせると思うか――キシャ……!?』

『グッ……ッ!?』


 駆け出した勇者二人を行かせまいと、ナーガは長大な尻尾を。

 オーガは金棒を振るい、二人を狙った。


 だが、それを許すレムとヤエではない。

 レムは瞬時に《霊剛鬼剣》を召喚し、ナーガの強靭な尻尾を食い止め、ヤエも同じく《アイギス》を召喚し、オーガにチャージアタックを浴びせる。


 他のミノタウロスたちも動くが、それぞれに騎士隊のジェシーたちが飛び出し、食い止めた。


 ユリウスとマイカが、四魔族レヴィの元へと駆けてゆく――



『ククククク……これはこれは、この忌まわしい神聖属性の波動、勇者様の登場のようでございますねぇ』


 迷宮十五層目――


 ユリウス皇子とマイカが足を踏み入れたその時、ねっとりと絡みつくような女の声が響く。


「赤銅色の肌に緑の髪、それにその毒毒しい紫の瞳……お前が四魔族のレヴィね?」

『ククク、如何にも。私こそが七大魔王が一柱、マモン様に仕えしレヴィでございます』


 マイカの問いに、四魔族――レヴィは慇懃な振る舞いで礼をする。


 身長は百八十センチほど、赤銅色の肌に執事服のようなもの纏った女の魔族だ。

 仕草や言葉使いは丁寧だが、どこか狂気を感じさせる男装の麗人……それがユリウス皇子とマイカが抱いた印象だった。


『さて、マモン様のを妨げようとする愚かなお二人には、お仕置きが必要でございましょう……!』


 レヴィが目を見開き嗤う。

 すると体から、毒々しい紫のオーラが迸った。


「ぐっ! なんだこの波動は!?」

「殿下! 気をつけてください、これは復活したての個体が放っていい力ではありません!」


 驚愕するユリウス皇子とマイカ。


 それを面白そうな表情で見つめながら、レヴィの体をオーラが包み込む。



『キシャシャシャシャシャ!』

「――何がおかしい?」


 対峙するナーガとレム。

 睨み合いの最中、ナーガが心底おかしいといった様子で笑い声をあげる。


 眉を顰めるレムに、ナーガは――


『まんまと引っかかりおったな、人間! レヴィ様はな……既に完全なる復活を遂げておるのだヨ!』


 邪悪な表情に顔を歪ませ、衝撃の言葉を放つのだった――

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