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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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54話 スケルトンと修道女の実力

「それじゃあ、隊長、それにレムたちも気をつけてな」

「あぁ、しっかり見張りを頼むぞ、ジェシー」

「ありがとうございます」


 迷宮の入り口にて――


 これからクエストに向かうレムたちに向かって、今回は迷宮の外で警戒任務に当たるジェシーが声をかける。


 迷宮では異変が起きている。

 いつモンスターが外へ出てくるとも限らない。


 腕の立つ騎士が対処できるようにと、ジェシーの他にラージたちも一緒だ。

 ヤエとレムもジェシーに応え、アリシアとアンリも軽く会釈すると、一行は迷宮の中へと足を踏み入れる。



「いきなりオークか……なるほど、確かに異変が起きているようだな」

「そうですね、ヤエさん。さっさと倒して奥へ行きましょう――来い、ハイスケルトンガードナー、ハイスケルトン!」


 迷宮へ入ると、レムたちは早速一体のオークを捕捉した。

 レムたちを見つけると、オークは『ブヒョォォォォォォォォ!』と雄叫びを上げて駆けてくる。


 目は血走り、随分と興奮した様子だ。

 恐らく、見目麗しいアリシアたちを見てヤル気になってしまっているのだろう。


 もちろん、そんなことはレムが許さない。

 あらかじめアリシアの《ランクアップ・マジック》で強化した状態で次元に帰還させておいたハイスケルトンガードナー一体と、ハイスケルトン三体を召喚し、敵の行く手を阻む。


「来て、《装剣蟲》!」


 続いて、アンリがフェイズシフトスキル、《戦蟲召喚》によって《装剣蟲》を三体召喚する。

 勢いよく飛び出す《装剣蟲》、アリシアの《ランクアップ・マジック》によって強化された三体のハイスケルトンの右腕に絡みつき、その刃を輝かせる。


「そうか、アンリは新しいスキルを得たのだったな。それにレムちゃんの呼び出したスケルトンに装備させるとは……なかなか面白い戦い方を編み出したものだ」

「ええ、侯爵様のおかげで優秀なスクロールを譲ってもらえたおかげです。よし、みんな頼むぞ」

『かしこまりました、マスター♪』

『『『了解です、マスター!』』』


 ヤエの言葉に応えると、レムはアンデッドたちをオークに向かわせる。

 ハイスケルトンガードナーにハイスケルトンたちが、勢いよく飛び出した。


 先頭はハイスケルトンガードナーだ。

 盾を構え、そのまま力強く踏み込む。


 オークの得物である棍棒と、激しい音を立ててぶつかり合う。

 ぶつかり合いに競り勝ったのはスケルトンガードナーだった。


 アリシアの《ランクアップ・マジック》によって強化された彼女の膂力はなかなかのものだ。

 それに加え、レムたちとの日々の訓練で盾技の精度も上がっている。

 絶妙な力加減でオークのパワーをいなし、敵のバランスが崩れたところで一気に押し込んだのだ。


『ふふん♪ 今ですよ、みんな!』


 オークの体勢を崩したところで、ハイスケルトンガードナーが声を上げる。

 すると、すぐさまハイスケルトンたちが《装剣蟲》を構え、オークへと殺到する。


『喰らえ!』

『これで……』

『お終いだ!』


 ハイスケルトン三体もまた、日々の修練で剣技の腕を上げていた。

 以前よりもスムーズな足取りで敵の間合いに踏み込むと、まるであらかじめ打ち合わせでもしていたかのように、オークの目、腹、そして心臓に《装剣蟲》による刺突を見舞う。


 アリシアの《ランクアップ・マジック》によって強化された膂力、日々の修練による剣技、そして《装剣蟲》の凄まじい切れ味――オークの傷口から、ブシュッ……! と鮮血が噴き出す。


 オークは凄まじい絶叫を上げながら、やがて痙攣し……その場に派手な音を立てて崩れ落ちた。


「し、召喚したアンデッド四体だけで、オークを倒してしまうとは……」


 スケルトンたちの予想以上の実力に、ヤエは引き攣った表情を浮かべる。


 本来であれば、スケルトンは最下級のアンデッドであるし、スケルトンガードナーも中級とはいえ単純な防御しかできないアンデッドだ。

 それが自らの意思でここまでの連携を見せ、オークを余裕で倒してしまうなど思いもしないだろう。


 当のスケルトンたちはというと、レムに「よくやった」と褒められると、ハイスケルトンガードナーは満面の笑みで喜びを露わにし、ハイスケルトン三体も、頬をほんのりとピンクに染め照れた様子を見せている。


 どう見ても人間の少女のようなそれに、ヤエは乾いた笑いを漏らすのだった。


「ご主人様、新手のようです」

「そうだね、この足音は……ゴブリンとオークかな?」


 アリシアが耳をピコピコと動かしながらレムに告げる。

 そしてそれをレムも聞き取っていた。

 大きな足音が一つ、それに小さな足音がいくつか……。


「レムくん、今度は私が迎撃するわ。スケルトンのみんな、敵の布陣が崩れたら飛び込んで!」


 曲がり角に向けて、アンリが手のひらを向けながらレムに告げる。

 そしてそのまま、スケルトンたちに指示を出す。


 ハイスケルトンガードナーが『了解です、アンリ様♪』と返事をし、ハイスケルトンたちも大きく頷くと、再び戦闘態勢に入る。


『ブヒ……ッ』


 曲がり角から、敵が姿を現わす。


 やはりオークだった。

 表情を見るに既に興奮状態のようだ。

 恐らくアリシアたちの声を聞いて、人間の女がいると感じ取ったのだろう。


『行きなさい、《甲弾蟲》……ッ!』


 オークがこちらの姿を捉えたか否かのその瞬間、アンリがスキルの名を口にする。


 彼女の手に入れた《戦蟲召喚》のもう一つのスキル、《甲弾蟲》――

 硬い装甲に包まれたそれが、アンリの目の前の空間に音もなく出現すると、その名の通り弾丸のような速さで飛び出した。


『ブヒャァァァァァ――ッッ!?』


 出会い頭の奇襲に、オークが反応できるわけもなかった。

 アンリの放った《甲弾蟲》は見事、オークの肩に、バスッ! と音を立てて突き刺さった。

 肩を撃ち抜かれた激痛で、オークがその場に蹲る。


 これで敵の動きは止まった。

 アンリは、今度はしっかりと照準を定め、再び《甲弾蟲》を放つ。


 動かなくなればオークと言えどもただの的だ。

 飛び出した《甲弾蟲》は、アンリの狙い通りにオークの額へと襲いかかり、ドパンッ! と音と鮮血、そして頭の中身を撒き散らす。


『グギャッ!?』

『グギャギャッ!』


 オークがその場に崩れ落ちたことで、後続のゴブリンたちが一体何事かと、死体になったオークに群がる。


 ゴブリンは馬鹿だ。

 すぐ側に敵がいるというのに、目の前のやられた同胞に気を取られ、自分たちの身が危ないということに気づかない。


「《甲弾蟲》!」


 アンリが三度、《甲弾蟲》を放つ。

 これもまた、ゴブリンのうちの一体にヒットし、その命を刈り取る。


 この段階になり、ようやくゴブリンたちもアンリの存在を思い出すが……もう遅い。

 既にスケルトンの三体が《装剣蟲》を構え飛び出し、ハイスケルトンガードナーも盾でアンリを庇うような位置取りで、ゴブリンたちに接近する。


 次々とゴブリンたちの断末魔が響く。

 レムたちは、ほとんど消耗することなく、迷宮一層目を突破するのだった。

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